雄大な自然が育んだ、洗練されたデザインと個性溢れる自由な造形。
フィンランドの環境や歴史を背景に生まれたガラス作品「グラスアート」の展覧会が東京都・目黒の東京都庭園美術館で開催されています。表現者たちはガラスという素材といかに対峙し、探求し、創作の可能性を押し広げていったのか——変わらず輝き続ける作品の魅力と共に、各時代・各作家たちのガラスへの信条と挑戦、込められたメッセージや想いを垣間見ることができる機会です。
夏の緑が眩しい庭園に立つ邸宅で、透明感と輝きを放つ多彩なグラスアートの作品を。会場写真とともに本展の見どころをご紹介します。
『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』の概要
本展は、デザイナーが自ら「アートグラス」の名のもとにデザインし、職人との協働作業によって生まれた作品に着目した展覧会です。1930年代の台頭期から1950年代に始まる黄金期、そして今に至る8名のデザイナーと作家が手がけた優品約140件に焦点を当て、フィンランド・グラスアートの系譜を辿ります。
北欧・フィンランドは、広大な森と湖に代表される豊かな大自然を有する国。機能性と洗練された美しさを兼ね備えるフィンランドの家具やインテリアなどのプロダクトは永く愛され、日本でも人気が高まり続けています。ガラスの分野においてはどのようなデザインが生まれたのか、その歩みを知ることができる機会です。
・フィンランドの美しいグラスアートを見たい!
・近現代におけるフィンランドのプロダクトデザインを学びたい!
・旧朝香宮邸のアール・デコ建築や庭園も楽しみたい!
本展は「キッズ向け展覧会」として子供向けのラーニングにも注力しており、入場時には「オリジナルおりがみ」が貰えます。光沢と透明感のあるフィルム製の折り紙は、ガラス細工のような仕上がりが魅力的です。
1917年にロシアから独立したフィンランドは、ナショナリズムが高まる中、新しい国づくりと国民のアイデンティティを取り戻すためにさまざまな側面でモダニズムが推進されました。その動向はガラスの分野も例外ではなかったといいます。
1930年代に行われたミラノ・トリエンナーレや万国博覧会などの国際展示会、それらに向けた国内コンペティションにおいて、ガラス作品にはよりモダンなデザイン性が求められるようになりました。その潮流の中で生まれたのがデザイナーによる芸術的志向の高いプロダクト「アートグラス」であり、次第にフィンランドらしさも芽生えていったのです。
第二次世界大戦を終えて1950年代以降、フィンランドのグラスアートは更なる発展を遂げ、国際的な名声を得て世界のデザイン界にその存在を顕示しました。
フィンランド・グラスアート展の見どころは、台頭期を代表するデザイナーから現代の作家に至るまで、100年近い歴史の流れと共に美しい作品やその変遷を見られるところです。
世界のモダンデザイン界に「フィンランド・グラスアート」の名を刻んだアルヴァ・アアルトやアイノ・アアルトの作品から始まり、黄金期と呼ばれる1950年代以降に活躍したカイ・フランクなど4名のデザイナーを紹介。そして、伝統技術に学びながらも独自のアプローチを見出し、優れた新たな芸術性を生み出している2名の作家を取り上げています。
フィンランドの森や湖に棲む動物、植物、そしてキノコや氷まで。表情豊かなグラスアートからは、フィンランドの自然の風景が想起させられます。
会場となる展示室のうち本館の建築は、1933年の建設当時にヨーロッパで隆盛であったアール・デコ様式。国の重要文化財にも指定される美しい邸宅の中、自然光で見るグラスアートの輝きには目を奪われます。
涼しげな「北の間」はガラス作品の透明感がさらに引き立ち、空間と展示品が見事にマッチ。東京都庭園美術館だからこそ見られる魅力的な展示をお楽しみいただけます。
ホワイトキューブの現代的な空間が印象的な新館ギャラリーは、色鮮やかでディティールもそれぞれ個性豊かなガラス作品がよく映えます。
映像コーナーではこれらの作品が実際にどのようにして作られているのかが分かります。
人工物でありながら、輝きと彩りは豊かな自然とそれを愛でる人の心に根ざす。それがフィンランドのグラスアートの魅力。
展覧会は9月3日(日)まで開催され、東京都庭園美術館の会期終了後は3つの美術館に巡回します。
館名 | 会期 |
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山口県立萩美術館・浦上記念館 | 2023年9月16日(土)〜12月3日(日) |
岐阜県現代陶芸美術館 | 2023年12月16日(土)〜2024年3月3日(日) |
兵庫陶芸美術館 | 2024年3月26日(土)〜5月26日(日) |
※富山市ガラス美術館、茨城県陶芸美術館の会期は終了
東京都庭園美術館は2023年10月に開館40周年を迎えます。アニバーサリーを記念するさまざまなプログラムの1つとして、「ニッポンのアール・デコはじめました」と題し、本館のデザインを再現したオリジナルのバッグや靴が発表されました。2024年4月よりミュージアムショップで順次販売予定です。
他にも記念事業としてさまざまなイベントなどが行われます。特設サイトの情報もどうぞお見逃しなく。
会期 | 2023年6月24日(土)〜9月3日(日) |
住所 | 東京都港区白金台5-21-9 東京都庭園美術館(本館+新館) |
時間 | 10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで) |
休館日 | 毎週月曜日 |
観覧料 | 一般 1,400円(1,120円) 大学生(専修・各種専門学校含む) 1,120円(890円) 中学生・高校生 700円(560円) 65歳以上 700円(560円) *( )内は団体料金。団体は20名以上(事前申請が必要) *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料 *身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と その介護者2名は無料(手帳の提示をお願いします) *教育活動として教師が引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(事前申請が必要) |
TEL | ハローダイヤル 050-5541-8600 |
URL | 東京都庭園美術館|https://www.teien-art-museum.ne.jp/ |
交通案内 | https://www.teien-art-museum.ne.jp/visit/#access |