芸術の秋がやってきた!

【展覧会レポート】サントリー美術館『御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物 —再現模造にみる天平の技—』

奈良の東大寺にある正倉院。
そこには、聖武天皇ゆかりの品々を中心とした約9,000点の宝物が伝えられています。

毎年の「正倉院展」ではその一部が出品されますが、これらには公式に“模造品”があることをご存じでしょうか?

この度は「再現模造」だけが集められ、約20年ぶりに大規模公開がおこなわれます。
全国を巡回する展覧会は、東京都・六本木のサントリー美術館にもやってきました。

再現模造とは一体何か? 制作されるようになった理由や意義・価値とは?
この記事では会場レポートも交えてご紹介します。

華やかなフライヤーとチケットデザインも素晴らしい!

『御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物 —再現模造にみる天平の技—』

本展のポイントは「再現模造」であるところ。展示品はどれも本物ではありません。

ですが、「えー、本物じゃないんだ。じゃあいっか……」と思ってしまうのはもったいない!
再現模造はとても意義のある事業で、宝物をまさに“よみがえらせる”ための取り組みなのです。

展覧会を通して再現模造について深く知るとともに、素晴らしい技巧や工芸品そのものの美しさを楽しんでいただけます。

こんな人におすすめ

・螺鈿や絹織物などの美しい正倉院宝物をたくさん見てみたい!
・再現模造って何だろう?どういうものか詳しく知りたい!
・きらびやかな工芸品がどうやって作られているのか学んでみたい!

なぜ再現模造は作られるようになったの?

「模造」と聞くとどんなイメージがありますか?
「コピー品」「パクリ」「にせもの」……あまり良くないイメージを持たれることもありますね。

「再現模造」はそのイメージを払拭するための造語として考えられた経緯もあります。
明治時代に奈良で開催された博覧会を機に模造制作が始まり、太古の技術を研究するとともに、宝物を未来へ遺していくためのプロジェクトとして国がリードしたのです。

実は1300年も前の宝物を守ってきたことは大変素晴らしいことで、人の手により守り伝えられてきた古代の宝物は、世界でも類を見ないそうです。
天皇の命令「勅封」で厳重に管理されていたことも要因となり、一般的な考古遺物よりも状態がいいと言われています。

それでも、さらに長い歳月を経ることで脆くなることは避けられません。加えて、災害の多いわが国では自然の脅威によって宝物が失われる懸念もあるのです。

再現模造はそうした未来への備えとしての側面もあります。

展覧会のみどころ

エントランスに足を踏み入れれば、大きな撮影パネルとアクリル製の《螺鈿紫檀五絃琵琶》があります。
展示室内は撮影NGですが、ここでは写真を撮れますので記念に楽しむのもいいかもしれません。

《螺鈿紫檀五絃琵琶》と一緒に写真を撮れるフォトスポット!

第1展示室に広がる《螺鈿紫檀五絃琵琶》を中心とした音楽の世界

展示室に入るとオープニング映像が流れ、琵琶の音色で正倉院の世界に引き込まれます。

メインとなる展示作品は、代表的な宝物《螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)》
世界で唯一の現存する五弦琵琶です。さまざまな分野の専門家が研究に携わり、こだわりぬいて再現を成し遂げました。

平成の時代に8年間かけて制作され、調査期間も含めるとなんと17年間。
貴重な素材を集めたり、ズレやゆがみが生じないように木材を年単位の時間をかけてゆっくりと乾燥させたりと、想像を超える努力で再現に取り組んだのです。

今は輸入が禁止されている「玳瑁(たいまい)」とはウミガメの甲羅のこと。動物由来のため素材の色や形はバラエティに富んでいますが、オリジナルの宝物に近い模様の部分を選んで使ったそうです。

展示されている模造品の中には、螺鈿や純金など貴重な素材を省略して代替品を使っているものも。それらと比較してみても、《螺鈿紫檀五絃琵琶》の再現模造がいかに重要だったかがわかります。

琵琶のほかにも、模造品を「作る過程」を紹介するユニークな展示が魅力的です。
わかりやすく、中高生や小さなお子さまも楽しめそうですね。

展示室を進んでいくと、【仏具・箱と几(き)・儀式具】のコーナーに移ります。

前回ここで開催された展覧会『千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子』では、1400年前に厩戸皇子が仏教を広め、天皇中心の政治体制をめざして国づくりを進めてきたことが紹介されました。
正倉院ができたのはそれから約100年後。律・令を基本法令とした中央集権国家となり、体制の安定と国家の安寧を願って仏教がクローズアップされている時代です。

聖徳太子が目指した国が100年後まさに実現している。偶然か必然か、展示が時系列に沿っていることもおもしろく、感慨深いものですね。

17:12で「実際に日本という国が完成するのは100年後」と言及しています。
前回展の会場で映像をご覧になった方もいるかもしれませんね。

【染織】のコーナーでは、欠損した部分まで調査して再現した織物を見られます。

国産蚕の品種「小石丸」のまゆと外国産まゆの比較も興味深いものです。
再現模造では、当時と同じ原料を使うことにもこだわりを持っています。上皇后・美智子様の育てた小石丸や、上皇陛下のお計らいで特別に栽培いただけた日本茜も使われていると知れば、より貴重な品物だと実感できますね。

第2展示室では《螺鈿箱》にまつわる再現技術を見られる!

階段を降りた先に広がる吹き抜けの空間では、【鏡・調度・装身具】を展示しています。

《螺鈿箱(らでんのはこ)》はまさに逸品!
「平脱」「伏彩色」といった技術を駆使した職人の技に驚かされます。
どのような技術なのかは展示の見せ方で解説しているので、ぜひじっくり見てみましょう。

すっぽんをモチーフにした《青斑石鼈合子》のようなかわいらしい作品もあります。

第3展示室では「文書」にもご注目

昔の人が書いたものまで再現模造になったなんて、驚きませんか?

「文書(もんじょ)」は、コロタイプ印刷という特殊な技術で再現されています。
「コロ」とはゼラチンのこと。コロタイプ印刷はゼラチン板を使った印刷方法で、高い再現性や長期保存に適しているため、正倉院宝物の模造制作にも使われたのです。

当時は紙が貴重だったため、いらないものも捨てずに裏紙として使っていたそうです。
巻物を途中で折り返させて裏面まで見せる展示にも注目してみましょう。

《写経生請暇解》もおもしろい展示の一つです。
当時、経典をきれいな字で写す「写経」のお仕事がありました。写経生たちは月ごとにお休みの日が決まっていて、書いた枚数でお給料が決まっていたようです。今で言う「歩合制」ですね。
中には1日も休まず書いて稼いでいた人もいたのだとか……!

そんな写経生たちがお休みを申請するときに書いたのが《写経生請暇解》。現代風に例えるなら「有給休暇申請」のようなものでしょうか。
「家族の看病のため」「お祭りがあるので」など……ユニークな申請理由からは当時の暮らしぶりが伝わり、昔の人の生活をちょっと身近に感じられます。

豪華なお土産がいっぱい!オリジナルグッズも盛り沢山

展示を見終えたら、ぜひミュージアムショップにも立ち寄ってみてください。

展示品をモチーフにしたエコバッグやキャンディ缶、文房具など、きらびやかな正倉院の宝物を日常でも身近に感じられるアイテムが豊富です。

ポストカードはコレクションにもおすすめ!

再現模造の魅力を知って正倉院の宝物をもっと楽しもう!

正倉院の宝物は、再現模造にも本物とは異なる魅力があります。
また、再現模造ならではの美しさも私たちを驚かせ、楽しませてくれるでしょう。

展覧会は3月27日まで。つややかな絹織物の表面や、超絶技巧の手彫り細工は近くで見てみると素晴らしさがより伝わります。
再現模造を楽しみながら、古代の日本に思いを馳せてみませんか。

展覧会情報
会期2022年1月26日(水)~3月27日(日)
※各作品の出品期間は、出品作品リスト(PDF) をご参照ください。
※作品保護のため、会期中展示替を行います
住所〒107-8643 東京都港区赤坂9丁目7−4 東京ミッドタウン ガレリア 3階
時間10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※2月10日(木)、3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日火曜日
※3月22日は開館
観覧料一般 当日 ¥1,500 前売 ¥1,300
大学・高校生 当日 ¥1,000 前売 ¥800
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
TEL03-3479-8600
URLサントリー美術館 公式サイト|https://www.suntory.co.jp/sma/
交通案内https://www.suntory.co.jp/sma/map/
ご案内

※会期・開館情報は状況により変更になることがあります。

最新情報は、美術館のホームページ、SNSをご覧ください。

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