「なにコレ? ほんまにおもろい展覧会やなぁ!」
なにわのアートコレクション、略して「なにコレ」をお披露目する展覧会が東京都・六本木のサントリー美術館で開かれています。
作品を所蔵しているのは大阪市立美術館。今秋から長期の改修工事に入ることを機に、他館で展示を行うのです。
そのラインナップは、8,500点の中から厳選した優品たち。
大阪市立美術館内でもめったに揃って展示されない品々が一堂に会する、貴重な機会です。
本記事では、展覧会初日の様子をお届けします。
『美をつくし 大阪市立美術館コレクション』の概要
本展は、初となる大規模な館外展。
紀元前から近代までの作品が、大阪から東京に大集合します。
ちなみに、サントリー美術館と大阪市立美術館というと、2021年11月に開幕した『千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子』の巡回先がこの2館でした。その頃からご縁があったのですね。
そもそも、サントリー自体も大阪の企業。
サントリーの創業者・鳥井信治郎氏の口癖「やってみなはれ」は「失敗を恐れずチャレンジしよう」という企業精神になり、サントリー美術館も所蔵品がゼロの状態からスタートしたというエピソードがあります。
そんなバックグラウンドも踏まえると、この2館ならではのコンビネーションを感じられるものです。
・仏像から近代絵画まで、いろいろなジャンルの美術品を楽しみたい!
・学芸員さんがわかりやすく解説する、見どころや鑑賞のポイントを知りたい!
・せっかくだから展示室の写真撮影も楽しみたい!
音声ガイドを務めるのは、上方落語家の月亭天使(つきていてんし)さん。大阪で生まれ育ち、関西で活動している月亭天使さんの展示解説は生粋の大阪弁。
朗らかな解説やトークで、鑑賞の気分を盛り上げてくれますよ。
大阪市立美術館は、東京(旧:東京府美術館、現:東京都美術館)、京都(京都市美術館)に次ぐ、日本で3番目に開館した公立美術館です。
昭和11年(1936年)にオープンした歴史ある建物は、荘厳でクラシカル。
戦前の貴重な美術館として、登録有形文化財(建造物)に指定されています。
そんな大阪市立美術館は、2026年の開館90周年を前に大規模な改修工事が行われることになりました。
ちょうど2022年7月16日(土)~9月25日(日)の『特別展 ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』を最後に休館することになったのです。
この長期休館の間、各ジャンルから厳選された優品が日本の各地にお出かけします。
- サントリー美術館
- 福島県立美術館
- 熊本県立美術館
お近くで開催があれば、ぜひ足を運んでみてください。
『美をつくし——大阪市立美術館コレクション』には「なにわのアートコレクション」というキャッチコピーがついています。通称、「なにコレ」。
いくつかの展示品には、キャプションに「サン美学芸員のなにコレポイント」が書いてあっておもしろい!
学芸員目線での見どころや萌えポイントがわかります。
また、今回のおもしろいところとして“古美術と近現代美術の二刀流ハイブリッド”な大阪市立美術館の魅力を伝えていることが挙げられます。
大阪市立美術館は、関西の財界人によるコレクションをまとめて収蔵した点に特徴があります。
そのため、美術史的な文脈よりもコレクターの審美眼や個性が際立ったコレクションになっているのです。もちろん、ジャンルも年代もバラバラ。
初めは所蔵品が集まらずに苦労したそうなので、まさに市民が育てた美術館と言えますね。
あの住友家も美術館を建てるための敷地を提供し、全額負担で開いた展覧会の作品を寄贈する太っ腹ぶりを見せたのだとか……!
展覧会タイトルの「美をつくし」は、大阪市章でもある「澪標(みおつくし)」になぞらえたものだそうです。
澪標とは、船の道標のこと。
かつて大阪の難波津に入る船の安全標識として設けられた杭であり、大阪市のシンボルです。
美の限りをつくしたコレクションの世界へ身をつくしてご案内します。
公式フライヤーより
ところで、サントリー美術館のロゴマーク「み」は「美」に由来するってご存知でしたか?
ここでもネーミングのちょっとした遊び心を感じられますね。
では、実際に“美のかぎりをつくした”コレクションを見てみましょう。
ほかにも、優美な佇まいが印象的な《木造 観音菩薩立像》や、美しい洋犬と牡丹を描いた橋本関雪《唐犬》などの優品を堪能できます。
ただ美しいだけじゃない、思わず「なにコレ!?」と口に出して言いたくなる作品も豊富です。
ほかに異形頭の妖怪パレード、原在中《百鬼夜行絵巻》も「なにコレ!?」な作品でした。チェンソーマンみたい?
展示室を歩きながら、自分のお気に入りの「なにコレ」を見つけてみてください。
第3展示室では、明治45年(1912年)に来日したスイス人の実業家、U・Aカザール氏によるカザールコレクションが見られます。
カザールコレクション、とにかくセンスがいい!!
日本好きだったというカザール氏の好みが手に取るようにわかります。
指定されたエリア内にある根付はすべて写真撮影OKなので、好きな作品を記念に撮っておくと思い出になりますね。
根付とは、印籠や巾着などを着物の帯に吊るして持ち歩くときに使われたもの。
滑り止めの留め具ですが、ファッション小物としてさまざまな技巧が凝らされました。
かなり細かな装飾が施されているため、じっくり見たい方は単眼鏡が必須!
職人の技を感じられます。
ミュージアムショップには、大阪市立美術館の限定グッズも出張してきています!
東京ではなかなかお目にかかれないミュージアムグッズ、この機会にご覧になってはいかがでしょうか。
カフェ「加賀麩不室屋」では、秋の味覚を楽しむ季節限定メニューが登場。
紅葉の形のお麩がトッピングされた「季節の麩あんみつ〈和栗〉」や、キャラメルソースとナッツが秋らしい「くるま麩のフレンチトースト〈キャラメル〉」を販売しています。
鑑賞後は、ゆったりとお茶を飲みながらスイーツを味わうのもいいですね。
ユニークな大阪市立美術館の所蔵品が東京で見られるのは、11月13日(日)まで。
まずは作品そのものの素晴らしさを楽しみながら、「なにコレポイント」の解説を見てクスッと笑える企画です。
芸術の秋にぴったりの展覧会、ぜひ会場を訪れてみてください。
会期 | 2022年9月14日(水)~11月13日(日) |
住所 | 〒107-8643 東京都港区赤坂9丁目7−4 東京ミッドタウン ガレリア 3階 |
時間 | 10:00~18:00(金・土は10:00~20:00) ※9月18日(日)・22日(木)、10月9日(日)、11月2日(水)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 火曜日 ※11月8日は18時まで開館 |
観覧料 | 一般|当日 ¥1,500|前売 ¥1,300 大学・高校生|当日 ¥1,000|前売 ¥800 ※中学生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料 |
TEL | 03-3479-8600 |
URL | サントリー美術館|URLリンク |
交通案内 | https://www.suntory.co.jp/sma/map/ |
おまけ
第1展示室の奥のほうに、葛飾北斎《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の独立ケースがありました。ちょっとデジャブですね。
第3展示室にあった《橋姫蒔絵硯箱》も前回展を見た人なら「水車ということは、宇治!」とすぐにピンときたはず。
過去展との微妙な繋がりが見えるとおもしろいもの。
美術館に通うのが楽しくなりますね。