2023.2.1 開設1周年。何かが起こる…?

【展覧会レポート】東京都現代美術館『ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台』

——柔らかな舞台の上で、物語が交差する。

ウェンデリン・ファン・オルデンボルフは、オランダ出身のアーティスト。
映像作品を手掛け、国際的に活躍しています。

そんな彼女の日本で初となる個展が、東京都・清澄白河東京都現代美術館で開幕しました。

11月初旬にプレス内覧会へ。
作家ご本人も登場し、制作にまつわる想いを語ってくださいました。

アーティストの言葉を交えつつ、本記事で展覧会の見どころについてご紹介します。

会場内の写真について

※本展主催者の許可を得て撮影をしています。

『ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台』の概要

本展は、ウェンデリン・ファン・オルデンボルフの国内初となる個展です。

会場では、彼女の代表的な映像作品から新作まで6点を展示。
東京都現代美術館の広々としたフラットな空間で、複数のミニシアターを行き来するように展示を楽しめます。

こんな人におすすめ

・映像のインスタレーション作品が見たい!

・演劇や映画が好きなので、近いテイストの現代アートを見てみたい!

・国際的な評価を得ている現代美術に触れてみたい!

ウェンデリン・ファン・オルデンボルフはどんなアーティスト?

ウェンデリン・ファン・オルデンボルフは1962年にオランダのロッテルダムで生まれ、現在はベルリンに在住しています。

2017年にはヴェネチア・ビエンナーレのオランダ館代表を務め、オランダの現代美術を代表するアーティストの1人として、20年以上に渡って映像作品・映像インスタレーションを発表してきました。

これまでに、ポーランド、スペイン、イタリアなどで個展を開催。
数々の国際展にも名を連ね、日本では2016年のあいちトリエンナーレに参加していました。

彼女曰く「映像は複数の体験を表せる」ことから、表現の手段として長年用いています。

植民地主義、ナショナリズム、家父長制、フェミニズム、ジェンダーなどに深い関心があり、さまざまな問題を取り上げて人びととの対話を試みる作品。

「編集をしているとき、自分がアーティストだと感じる」と彼女は言っています。
社会問題を取材しているとはいえ、彼女自身が発言やインタビューをすることはありません。その点でジャーナリストとは異なり、“アーティストである”ことが彼女のアイデンティティなのです。

展覧会の見どころ

ファン・オルデンボルフは制作にあたって、「この社会の課題についてどう表現できるか考えている」と言っています。

舞台となるのは、作品のテーマと深い関係がある場所。
出演者は俳優ではなく、作家本人の知り合いたちです。

完全即興ではなく、事前にテーマの共有や大筋の脚本はあるものの、何が起こるかわからない場。
人物たちは誰かを演じているのではなく、ありのままの姿でそこにいます。

映画やドラマのようなカチッとした撮影ではなく、“柔らかな舞台”を作ることを意識した——そのことが展覧会タイトルにも表れています。

まるで舞台セット?「交差」に目を向けて設計した空間

展示空間には小さいシアターのような、1つのスクリーンと客席で構成された機構がいくつもあります。

順路は定められていません。
何を見るかは鑑賞者が決められる自由度の高さ。直感的に自分の見たい作品から、気の向くままに鑑賞できます。

展示室入り口でヘッドホンを借りられ、作品によっては座席にイヤホンジャックがあるので、他の作品の音声がノイズになる心配もありません。

薄暗い展示空間で、人びとの身体・視線・声が交差する空間構成。
「交差」に目を向けることこそが、社会の現状や枠組みを揺るがし、変化を可能にするのではないか——そのような意図が込められています。

パネルで完全に遮断するのではなく、ゆるやかな繋がりのある空間は“作品同士が話し合う、対話をする様子”を表現したのだとか。人だけではなく作品間の対話もイメージされています。

押しつけではなく、参加して一緒に理解を深めてもらうことを目指した展示です。

《ふたつの石》2019年 の客席からの眺め。
向こう側には、《偽りなき響き》2008年 が上映されている。

その中でも、初期作品である《マウリッツ・スクリプト》はファン・オルデンボルフ作品の特徴をよく表すことから、冒頭に配置したとのこと。

《マウリッツ・スクリプト》は、17世紀のオランダ領ブラジルで総督を務めたヨハン・マウリッツについて取り上げ、その統治についてマウリッツの手紙などを読み上げながら議論する内容です。

「人間が抱えるジレンマを理解するには、環境の歴史を遡って考えることが重要」というファン・オルデンボルフの独特な視点が表れています。

《マウリッツ・スクリプト》2006年

日本で撮影された新作も!さまざまな作品に出会える場所

ファン・オルデンボルフの映像では、音楽や映画などの芸術・芸能やその歴史も要素として多く取り上げられます。

ポーランドの映画産業に関わる女性たちと制作した《オブサダ》もその1つ。
「オブサダ(obsada)」はポーランド語で「キャスト」を意味する言葉です。

映画業界で活躍する人物は男性が多く、まだまだジェンダー平等とは言えない部分もある世界。
その中であえて映画の作り手を目指す女性たちの心境や、抱えている問題意識について率直な言葉が交わされています。

同じく若い女性が登場する《ヒア》でも、オランダで音楽や文芸に携わる当事者たちが登場します。
舞台となったのは、オランダにある改装中のアーネム博物館。同国の歴史を学ぶには欠かせない場所が新たな形になろうとしている、という象徴的な場が選ばれました。

《ヒア》2021年

また、本展を機に日本で制作された新作《彼女たちの》では、20世紀前半に活躍した作家である宮本百合子と林芙美子が題材に

裕福な家庭に生まれながらも社会主義に傾倒し、戦時中には投獄される経験もした宮本。
貧しく苦労しながらも人気作家となり名を上げた林。

対照的なようでいて、同じように女性の社会的地位・性愛・戦争といった問題に切り込み、奇しくも同じ1951年に亡くなった2人。
対話や彼女らが紡ぐテキストの朗読を通して、それらが現代社会のどのような側面を映し出すかを探る作品となりました。

撮影が行われたのは、林芙美子が自分で設計した旧邸です。

この作品に出演している俳優の横田美優さんはクリエイターズ・コレクティブ「ザ・フー」のメンバー。
本展の期間中、ミュージアムショップではザ・フーのZINEやグッズを購入できます。

《彼女たちの》2022年
ザ・フーのZINEとオリジナルグッズ

柔らかな舞台にあなたは何を見る?

鑑賞者が問題について一緒に考えられることの大切さ。
まさにこれが、現代アートの醍醐味です。

「対話」や「交差」がキーワードとなる本展では、会期中にギャラリートークや読書会などの関連プログラムも予定されています。参加方法・詳細は美術館の公式サイトで順次公開されるため、随時チェックしてみましょう。

会期は2月19日(日)まで

映像作品で構成される本展では、「この作品をもう一度見たい」と思う人にぴったりの特典も。
購入したチケットで1回限り再入場できる「ウェルカムバック券」が用意されています。

——あなたも“柔らかな舞台”を目撃してみては?

展覧会情報
会期2022年11月12日(土)― 2023年2月19日(日)
住所〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内) 東京都現代美術館 企画展示室 3階
時間10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日月曜日(1月2日、1月9日は開館)、12月28日-1月1日、1月10日
観覧料一般1,300 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上900円 / 中高生500円 /小学生以下無料
※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
TELハローダイヤル(9:00-20:00 年中無休)050-5541-8600
URL東京都現代美術館|https://www.mot-art-museum.jp/
交通案内https://www.mot-art-museum.jp/guide/access/
ご案内

※会期・開館情報は状況により変更になることがあります。

最新情報は、美術館・展覧会のホームページやSNSをご覧ください。

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