【展覧会レポート】永青文庫 早春展『中国陶磁の色彩―2000年のいろどり―』

東京都・目白台永青文庫が開催する令和5年度の早春展では、重要文化財3点を含む中国陶磁の優品を紹介します。同館が所蔵する中国陶磁を“色”をテーマに紐解き、2000年の歴史を辿る展覧会です。

会場内の写真について

本展主催者の許可を得て撮影をしています。

永青文庫の中国陶磁コレクションを公開

永青文庫には、漢時代から清時代までの中国陶磁100点以上が所蔵されています。コレクションは、永青文庫の設立者である細川護立(ほそかわもりたつ)の蒐集品と、大名細川家の伝来品からなり、所蔵品を通しておよそ2000年にわたる中国陶磁の歴史を辿れることが特徴です。

中国陶磁の色彩展の見どころ

本展では、さまざまな色彩の中国陶磁を細川護立の蒐集エピソードと共に展示しています。護立は、日本において鑑賞に主眼を置いた「鑑賞陶器」として中国陶磁が注目されるなか、蒐集を始めました。いち早くその価値を見出した護立は、「鑑賞陶器」蒐集の草分けの一人として位置づけられています。

同じ時代、洋画家の梅原龍三郎や陶芸家の河井寬次郎なども中国陶磁に魅せられ、自らの作品に取り込んでいきました。展示の後半では、彼らが題材にした作品も見られます。

色彩の多様性と独創性

色をテーマとする本展では、中国陶磁のさまざまな色彩を堪能できます。

中国陶磁の始まりは遥か昔、新石器時代。この時期に生まれたのが灰色の土器である灰陶(かいとう)です。対照的に多色で華やかな唐三彩(とうさんさい)は、複数の釉薬をかけ分けた陶器のこと。その技法は唐時代に確立されました。これらは明器(めいき・墳墓などにおさめる副葬品)としても用いられたといいます。

緑色が美しい緑釉(りょくゆう)は、中国では古く漢時代の明器にも用いられました。2点が展示されているので、絶妙な色味の違いにもご注目を。

白と黒のやきものは3種類が展示されています。磁州窯(じじゅうよう)は白化粧を特徴とする陶器を指す名称です。同じく白い器の白磁は、磁器特有のなめらかな質感が見事。黒釉(こくゆう)は漢時代より用いられ、宋時代には曜変天目をはじめ、油滴天目(ゆてきてんもく)や禾目天目(のぎめてんもく)など数々の天目茶碗が作られました。

青のやきものも豊富です。代表的なものは、漢時代に登場して明時代まで中国陶磁の主流であり続けた青磁。他には、不透明な青白色で、中国では「天青」と呼ばれた澱青釉(でんせいゆう)や、元時代に創始された青花(せいか)などがあります。

透明釉をかけた磁器にさまざまな上絵具で文様を描いた五彩(ごさい)は元時代に伝わり、明時代になると金色の文様も加わって装飾性豊かなものが作られました。さらに、清時代には技術開発が進み、桃のような複雑な色合いを表現する桃花紅(とうかこう)などが生み出されました。

中国陶磁に魅せられた、近代の画家や陶芸家の作品も。

洋画家・梅原龍三郎の描いた《唐美人図》は、唐時代の《加彩女子》に惹かれて制作されたと言われています。

本展ではこれら2点を3月3日まで同時に展示する他、河井寬次郎や宇野宗甕(うのそうよう)など、中国陶磁を研究した近代陶芸家の作品を展示します。

中国陶磁を鑑賞する、楽しさがわかる。

永青文庫で中国陶磁の展覧会を開催するのは6年ぶり。4月14日(日)までの開催です。

中国陶磁の色彩が魅せる世界と、2000年の歴史の歩みを体感しまょう。

展覧会情報
会期2024年1月13日(土)~4月14日(日)
※状況により、臨時に休館や開館時間の短縮を行う場合がございます。
※ご来館にあたって事前予約は必要ありませんが、混雑時はお待ちいただく場合がございます。
※当館の感染症予防対策については、ホームページをご覧ください。
住所〒112-0015 東京都文京区目白台1-1-1
時間10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日毎週月曜日(ただし2/12は開館し、2/13は休館)
観覧料一般1000円、シニア(70歳以上) 800円、大学・高校生500円
※中学生以下、障害者手帳をご提示の方及びその介助者(1名)は無料。
TEL03-3941-0850
URL永青文庫|https://www.eiseibunko.com/index.html
交通案内JR目白駅(「目白駅前」バス停)・副都心線雑司が谷駅出口3(「鬼子母神前」バス停)より、都営バス「白61 新宿駅西口」行きにて「目白台三丁目」下車徒歩5分。
都電荒川線早稲田駅より徒歩10分。
有楽町線江戸川橋駅(出口1a)より徒歩15分。
東西線早稲田駅(出口3a)より徒歩15分。
※一般車両用駐車場はございません。周辺の有料駐車場をご利用ください。
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