【展覧会レポート】Bunkamuraザ・ミュージアム「ボテロ展 ふくよかな魔法」

「ボテロさんが見つけた、ふくよかな魔法を見てみませんか。」

人も楽器も果物も、何もかもを“ふくよか”に描いた画家がいます。フェルナンド・ボテロ。日本では26年ぶりとなる彼の大規模展が、東京都・渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されました。

5月中旬、ブロガー向け特別内覧会へ。会場の様子とともに、展示の見どころをご紹介します。

「ボテロ展」入口の様子

※本展主催者の許可を得て撮影をしています。
※通常、本展では第6章「変容する絵画」の一部作品に限り写真撮影が可能ですが、5月中の金・土曜日の17時以降は、展示室内の全作品の撮影が可能です。ぜひお写真もお楽しみください。

「ボテロ展 ふくよかな魔法」の概要

この展覧会は、コロンビア生まれの画家・ボテロの生誕90周年をお祝いする機会でもあります。

こんな人におすすめ

・ボテロさんの“ふくよか”な作品を見てみたい!
・ラテンアメリカらしい陽気な雰囲気を味わいたい!
・写真撮影やいろいろなコラボレーションなど、展示にまつわる企画も目一杯楽しみたい!

音声ガイドはナレーターに声優の伊東健人さん、オフィシャルサポーターに男性ダンス&ボーカルグループのBE:FIRSTを迎えています。ブロガー内覧会では特別に音声ガイドも貸し出していただきました。

伊藤さんの落ち着いたナレーションは聞きやすく、「(ボテロさんは)こんなふうに言っています」と随所でボテロさんの言葉を紹介してくれます。BE:FIRSTのメンバーは終始楽しそうで、元気よく展示鑑賞を盛り上げてくれるトークが印象的でした。

Bunkamuraザ・ミュージアムの音声ガイドは、こうしたフレンドリーなガイダンスがいつも魅力的。静謐な解説トークも良いものですが、鑑賞者と同じ目線でワクワク感を演出してくれる音声ガイドもおもしろいものです。

ガイドでは「ボテロさん」と親しみを込めてさん付けしていたので、この記事でも「ボテロさん」と書いてみます。

ボテロさんはどんな人?

フェルナンド・ボテロはコロンビア生まれの画家で、20歳の頃にヨーロッパに渡って絵画の勉強をしました。欧米で高く評価され、今では現代を代表する美術家・巨匠のひとりとして数えられています。

“ふくよか”な独特のスタイルと、ラテンアメリカらしい色鮮やかな画面が印象的です。

マリー・アントワネットもボテロさんの手にかかればこの通り!

展覧会の見どころ

この展覧会はボテロ本人が監修し、初期から最新の作品までが一堂に会します。そのほとんどが日本初公開となり、すでにボテロ作品を見たことがある人も必見です。

音声ガイドでは、南米らしいラテンなBGMが雰囲気作りをしています。作品の1つ1つも大きいため、見応えはたっぷり。ぜひ、ボテロさんの魅力を存分に味わいましょう。

貴重な初期の作品にもご注目!
BE:FIRSTのメンバーも絶賛していた、フェルナンド・ボテロの《オレンジ》

ふくよかな魔法にかかってみよう!

ボテロさんはふくよかな絵を描く理由として、「芸術的な美」「ボリュームと官能性」へのこだわりがあると言っています。また、「芸術はデフォルメ」と言い、ふくよかさはデフォルメであるとも言い切っているのです。

ふくよかな表現に目覚めたきっかけは、ある日マンドリンの絵を描いていたとき。楽器の中央に空いた穴をあえて小さく描いてみたら、本体の丸みと大きさが強調され、マンドリンが爆発したように思えたそうです。

フェルナンド・ボテロ《楽器》
マンドリンが爆発!

展示室では、水彩画にもご注目。ふくよかな絵画も水彩で着色されると、ボリュームの中に透明感や軽やかさが生まれます。

水彩画の数々は、キャンバスの表裏をあえて逆にしているのだとか。

ボテロさんは古典を自分なりに描くことにもこだわりました。その理由は「絵を学ぶため」。モチーフとして借用しているわけではないと言います。彼が本当に絵を追究した人であることが伝わるようです。

フェルナンド・ボテロ《モナ・リザの横顔》はなんと世界初公開!

「無表情」にこそ意味がある

ボテロさんの絵は、よく見るとどの人も無表情です。楽しげな演奏の様子でさえも、みんな仏頂面。真顔で楽器を奏でています。

フェルナンド・ボテロ《楽士たち》
ところでこの楽器、どこかで見たような……?

これには重要な意味があります。人でさえも静物画のように描き、余計な情報を与えないことで、絵に集中できるようにしたいという思惑なのです。ボテロさんは、「それが正しい絵画の見方」と語ります。

無表情でも不思議とネガティブな感情にならないのは、ふくよかなシルエットの効果とも言えますね。他にも、古代メキシコ・オルメカ文明の美術に見られるような表情や造形に影響を受けているようです。

コロンビアとの密接な繋がり

コロンビアといえば、サッカーやコーヒーが有名。そして、闘牛の国でもあります。南米の国ですが、長らくスペインの植民地であった頃の影響も色濃く残っている場所です。

ボテロは自分らしい芸術を追究する上で、次第に自身のルーツと向き合うようになりました。現在もボテロはコロンビアには住んでいませんが、生まれた国としてコロンビアとの繋がりは強く意識しています。

また、コロンビアはカトリックの国。ボテロ自身はキリスト教徒ではありませんでしたが、教会に毎日行くことは日常の一部であり、そこで見る宗教画が彼と芸術の出会いだったのだとか。

《コロンビアの聖母》は、涙を流す聖母と小さなコロンビアの国旗を持った子が印象的な絵です。コロンビア国内での内戦や、残虐な殺害を悲しんでいるとも言われています。

このご時世、地理的に離れてはいるもののウクライナのことが頭をよぎりますね。

色とりどりのグッズや“ふくよか”な図録にご注目!

今回の図録は、丸い角にボリューミーな表紙がユニークな特別仕様。グッズにも、「ふくよかシール」やお腹用のメジャーなど、展覧会にまつわる商品が勢揃いです。

《黄色の花、青の花、赤の花》をモチーフとしたカラフルなインテリアグッズやお菓子など、ラインナップが魅力的。また、コロンビアらしいコーヒーやカカオケーキといったアイテムもお土産にはぴったりです。

目にも鮮やかなグッズの数々

屋外には、特別に《小さな鳥》が展示されています。ボリューミーな彫刻の作品もぜひお楽しみください。

フェルナンド・ボテロ《小さな鳥》

Bunkamura館内にあるレストラン「ドゥ マゴ パリ」「ロビーラウンジ」では、ボテロ展とのコラボメニューも味わえます。また、6階の「ル・シネマ」ではボテロのドキュメンタリー映画を公開しています。

詳しくは、展覧会特設サイトのコラボレーション情報をご覧ください。

ボテロさんのふくよかな魔法にかかってみよう!

「私は、太った人を描いていません。」ボテロさんの言葉です。

実はこの展覧会のオフィシャルサポーターが発表されたとき、(プラスサイズの芸能人やモデルさんじゃないんだ……?)と思った私ですが、ボテロさんが芸術で何を大切にしてきたかを知ってからは、納得しきり。

展覧会は7月3日までです。

ボテロさんのふくよかな魔法の世界を、どうぞお楽しみください。

《ピエロ・デラ・フランチェスカにならって》
ボテロはイタリアで出会い、以来ずっと「最も尊敬する画家」と憧れてきました。
展覧会情報
会期2022年4月29日(金・祝)~2022年7月3日(日)
住所〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1
時間10:00-18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる場合がございます。
休館日5月17日(火)
観覧料入館料(消費税込)
一般:1,800円
大学・高校生:1,100円
中学・小学生:800円
TEL050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL展覧会 公式サイト|https://www.ntv.co.jp/botero2022/
Bunkamura特設ページ|https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/
交通案内https://www.bunkamura.co.jp/access/
ご案内

※会期・開館情報は状況により変更になることがあります。

最新情報は、美術館のホームページ、SNSをご覧ください。