積読(つんどく)があるから人生は楽しい。「はかどるスペースtsundoku」が神保町にオープン

「積んであるのは、夢か未練か。」そんなキャッチコピーとともに、誰もが気軽にチャレンジできる場所「はかどるスペースtsundoku(以下、tsundoku)」が神保町にある築50年のビルにオープンしました。8月31日(日)には関係者向けのお披露目会を開催。これから始まるさまざまな企画や催し物、実施中のクラウドファンディングの説明が行われました。

東京メトロ・都営新宿線「神保町」駅から徒歩6分の西神田イノセビル。
ロゴは「コツコツ少しずつでも前進する」願いを込めた、フンコロガシがモチーフ。
お披露目会では神保町のベンガル料理店「トルカリ」のビリヤニと、「BACK TO RIVER」のクラフトビールが振る舞われました。

本の街・神保町に誰でも参加できるスペースを

神保町は古書店街としての長い歴史があり、周囲には漫才劇場や学校が建ち、人々の賑わいの中で新しい文化の流れが交差する街。その一角で始まるtsundokuはどのような場所を目指しているのか、立ち上げ人の猪瀬景子さんにお話をお聞きしました。

tsundokuを立ち上げ、運営・管理を担う猪瀬景子さん。

まずはここまで準備してきたものが形になり、内部向けのお披露目会を迎えた今、率直なお気持ちを聞かせていただきました。

猪瀬さん:もちろん嬉しさもありますが、まだまだ不安もあります。この企画に協力してくれた友人たちがいて、全然会っていなかった知人たちも遊びに来てくれて、クラウドファンディングで支援もしてくれて。本当にいいのかな、迷惑じゃないかな、みたいな申し訳なさも少し感じているのが今の正直な気持ちです。特に、今日のお披露目会でもスタッフをしてくれている二人の友人は、「やりたいことができる」とtsundokuに期待してくれているから、そのために頑張らなければな、とも思っています。そういう気持ちが8割ぐらいですが、残りの2割はそんなことはどうでもいい、ただ心から楽しい、という感じです。

tsundokuの屋上でインタビューに答えてくれた猪瀬さん。

tsundokuが入っている西神田イノセビルは、もともと猪瀬さんの祖父が所有していたといいます。

猪瀬さん:祖父が亡くなって父親が引き継いだので、「好きに使ってもいいですか?」と聞いて。そうしたら、「4階と屋上だけだったらいいよ」と許可が出ました。他の階はすでに入居者がいるところもあれば、貸し店舗として借主を募集しているところもあります。私が使いたいと伝えるまでは、親は事務所として貸し出したかったようですが、何だかもったいないな、もっと面白そうなことができそうだなと感じたんです。

街の中に新しい場を作り、管理者として運営を担っていくことに、気持ちの面でハードルはなかったのでしょうか。

猪瀬さん:ハードルの高さはありました。けれども、それよりもやりたい気持ちのほうがずっと大きくて、躊躇わずに勢いをつけて走り出せたように思います。

tsundokuで販売しているビンテージのネクタイは、お洒落が好きだった祖父の遺品。

tsundokuを作ろうと一人で決めてから、興味を持ってくれた友人たちも協力者として巻き込みながらの日々。オープンまでの準備期間を、猪瀬さんはこう振り返ります。

猪瀬さん:みんなで壁を塗ったんですよ。モルタルを手で塗るのはすごく楽しかったです。屋上ではピクニックをして、そのことも思い出になっています。

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ナチュラルな手作り感のある壁は、居心地の良さを感じさせてくれます。

やりたいことが沢山ある人たちの、「つんどく」を溜め込んでおける場所

本を購入していつか読もうと思っているものの、まだ読まずに放置していることを表す「積読(つんどく)」。場を作るにあたって、「つんどく」をコンセプトに決めたという猪瀬さんにとっては、どのようなイメージのある言葉なのでしょうか。

猪瀬さん:やらなくてもいいな、と思っていることが「つんどく」だと思っています。本心ではやりたいけど、今じゃないなと優先度が下がってしまったり、やらない理由を並べてしまったりする。私は特に、コロナ禍にそういう「つんどく」が増えていく感覚があり、しんどいなと感じていた時期があります。でも逆に考えれば、「まだやりたいことが残っている」「やるまで死ねない」とも思えるのは、人生の中で希望にもなると思いました。

tsundoku立ち上げに協力してくれた友人たちも、各々の「やりたい」を抱えている仲間。

「やりたいことがあるけれどできない」「時間や場所がない」と思っている人が、リーズナブルな価格で場所を借りて、気軽にチャレンジできる場所。それを作るために猪瀬さんが大切にしたのは、「失敗ができる場所」でした。

猪瀬さん:大人になるにつれて、新しいチャレンジがどんどん難しくなっているように感じます。時間やお金などの現実的な問題に加えて、結局のところ一番のハードルは、「気軽に試せる場所」と「失敗を受け止めてくれる環境や人」がないことではないでしょうか。そんな仮説のもと、自分自身や周りの人が「つんどく」状態になっている想いやアイデアを、気軽に試せる場所を作りたいと思いました。神保町という場所も、古いものと新しいもの、日本と海外の文化が入り混じる、多様で懐の深い街。そんな街の味わいも、tsundokuのコンセプトに合致していると感じています。

約10帖の空間が展示・イベント・販売・バーなど多様な場に

フリーマーケットや個展など、すでにtsundokuではさまざまなイベントの開催予定が立ち始めています。今後、この場をどのように活用してほしいかをお聞きしました。

猪瀬さん:私自身が何かするというよりも、ここで何かしたいと思う人に場所を提供したいです。展示や映画鑑賞会、ワイン教室やビジネス講座、飲み会などどんなことでも。例えば私の友達は小さいお子さんがいて、気軽に宴会ができるスペースがあったら嬉しいという声もありました。何でもアイデアを持ち込んでもらえたらいいなと思います。

プロジェクターで白い壁一面に映像を投射すれば、小さな映画館に。

そのために、クラウドファンディングで集めた資金は設備拡充にも使いたいと猪瀬さんは話します。

猪瀬さん:色々な人に、色々な使い方をしてほしい。私がtsundokuに込めた想いを伝えるためにも、しっかりとそれを発信して、多くの人に使ってもらいたいです。壁に何か描いたっていいし、「個展をやるためにカーテンレールがほしい」という希望があれば購入します。家賃がかかっていないので、お金はそんなに採算を求めていなくて。使う人によって設備を拡充させていきたいなと考えています。

冷蔵庫や調理場があるので、食事や飲み物を振る舞うイベントも開催できます。

誰かの「やりたいこと」を叶えていくtsundokuのオープンでアットホームな環境。その中で、猪瀬さん自身もやりたかったことにトライしていました。

猪瀬さん:置いているのは古着や私自身が作った衣服で、実はどのアイテムにも物語があるんです。例えばこのコートは、今はない渋谷の古着屋さんで購入したもの。「こういったゆるっとしたシルエット、似合うね」と憧れの人に言われてから、嬉しくってヘビロテしていた、みたいな物語をタグに書きました。小さな古着屋というか、無人販売所みたいな感じにしています。そういう古着屋が私のやりたいことですが、私が出店するだけではなくて、色々な人の古着が集まったら面白いなと思います。

ただ売るだけではなく、手書きでエピソードを添えるところに工夫があります。

猪瀬さん:古着以外にも、色々な人の物や作品が集まったらいいなと思います。何かのイベントでtsundokuに来た人がそれを見て、興味を持って購入するようなことがあっても面白いですね。

可動式の本棚にはZINEなどが持ち寄られ、「いずれは壁一面をこの棚で埋め尽くしたい」と猪瀬さん。
手仕事の温かみを感じる木箱は、りんご農家から買い取ったもの。

tsundokuは失敗できるからチャレンジもできる

気軽に試せる場所、それがtsundokuの面白さ。アクセス面でも複数路線が使えて駅から近く、気軽に集える場所ともいえます。失敗を許す場所や環境が少なくなりつつ社会の中、ある意味でゆるく寛容な場所で、「やりたい」と心の中で「つんどく」になっていたチャレンジを実現してみませんか。

クラウドファンディングは2025年10月22日(水)まで実施中。スペースの利用や運営に興味のある方は、随時お問い合わせが可能です。

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▼はかどるスペースtsundoku

〒101-0065 東京都千代田区西神田2丁目4-12 西神田イノセビル4階
神保町駅・九段下駅より徒歩5分、水道橋駅より徒歩10分