【展覧会レポート】ホテル雅叙園東京「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」

ホテル雅叙園東京では、館内に有する東京都指定有形文化財「百段階段」にて「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」を2024年10月5日(土)から2024年12月1日(日)まで開催します。

文化財「百段階段」では初となる月をテーマにした企画展で、タイトルの由来は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年が、月にちなんださまざまなモチーフを描いたシリーズ「月百姿(つきのひゃくし)」です。

本記事では、開幕前日に行われたメディア内覧会の様子をリポートします。

※主催者の許可を得て撮影をしています。

文化財の中で愉しむ浮世絵

まずは三日月のオブジェと秋の草花が彩るエントランスを通り過ぎ、1つ目の「十畝(じっぽ)の間」へ。ソファに腰掛ければ、まさに邸宅の客間のように落ち着いてくつろげます。

こだわりの展示空間は、浮世絵が描かれた当時に近い環境をできる限り再現したもの。まるで日本家屋の行燈の中で見るような浮世絵は、美術館の鑑賞時とは異なる趣が感じられます。

十畝の間 展示風景より

実は、すべての浮世絵に月が描かれているとは限りません。眺める人を描いて目線の先に月があることを表現するなど、日本らしい耽美的な味わい深さに満ちています。

十畝の間 展示風景より

ダイナミックな月アートと建築とのコラボレーション

ホテル雅叙園東京の中で最も絢爛豪華な部屋「漁樵の間」では、「月百姿」のひとつ「石山月」をモチーフに表現しています。この浮世絵に描かれているのは紫式部で、文学の寺として知られる石山寺に参詣した折、源氏物語が生まれたという伝承が残されています。

2024年夏の企画「和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎばなし~」にも登場した満月は、紙漉きの技術を応用して制作したものです。「今回はさらに大きな月を用意するために、規格外の枠を使って手漉きで和紙をつくり、落水という昔からの伝統技術を用いて月の表面を表しました」と作者の高山しげこさん。大河ドラマ「光る君へ」ではかつて紫式部も和紙を使っていた様子が描写されており、タイムリーな展示ともいえます。

漁樵の間 展示風景より
漁樵の間 展示風景より

「草丘の間」はまるで芳年の浮世絵に入り込んだかのように思わせる、ドラマティックな空間です。風音のSEとともにそよいで揺れる本物のススキは、秋の野原そのままの香りで五感を刺激します。繰り返し投影されるプロジェクションマッピングは、虫の音から始まり、煌々と輝く満月を映し出します。

草丘の間 展示風景より
静水の間 展示風景より(奥の間)

現代のアーティストによる月をモチーフにした作品を展示

近世の浮世絵だけではなく、現代のアーティストによる月の表現も味わえるのが本展の魅力です。まさに、現代の「月百姿」ともいえる作品の数々を見てみましょう。

岩谷晃太さんの《月と稲妻》は、白黒のはっきりとしたコントラストと稲妻がモダンで斬新です。古典的な日本画ではあまり使われない黒を主体にしつつ、技法は同じ岩絵具を用いていることが特徴的です。絵が飾られている床の間も、日本画を鑑賞するときの伝統的な風景でありながら、「3Dの空間を閉じ込めるような」絵画が新鮮な趣をもたらします。

静水の間 展示風景より(前室)

部屋の名前である星光、と響き合うような伊藤咲穂さんの作品は、「月の形そのものではなく、エネルギーや引力を表現した」といいます。花鳥風月というように、昔から月を愛でてきた日本人の感性にも改めて気づかされます。

星光の間 展示風景より
頂上の間 展示風景より

文化財ならではのお月見体験ができる、秋らしい企画です。文化財建築を照らし出す今昔の月が演出する、没入感たっぷりの世界をお愉しみください。

開催概要
会期2024年10月5日(土)〜12月1日(日)
住所〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-8-1 ホテル雅叙園東京
時間11:00〜18:00(最終入館17:30)
休館日11月5日(火)展示替のため休館
観覧料一般 ¥1,600
大学生・高校生 ¥1,000
中学生・小学生 ¥800
※要学生証呈示、未就学児無料
※料金は税込みとなります。
TEL03-3491-4111(代表)
URLhttps://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/tsukinohyakushi
交通案内目黒駅(JR山手線西口、東急目黒線、地下鉄南北線・三田線)より徒歩3分

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