【展覧会レポート】森アーツセンターギャラリー『特別展アリス —へんてこりん、へんてこりんな世界—』

独特な世界観で、多くの人びとを魅了する『不思議の国のアリス』

ファンタジックでキュートで、奇妙なユーモアに溢れるアリスの世界が、東京都・六本木森アーツセンターギャラリーにやってきました。

夏から秋にかけてのレジャーシーズンでは、他のいろいろな美術館でも児童文学をテーマにした展示が話題を呼んでいます。
今回、ご招待いただき私も会場を訪れてみました。

『特別展アリス』のメインビジュアルはピンクとブルーの色使いがキュート。
会場内の写真について

※本展の規定に沿って撮影をしています。

『特別展アリス —へんてこりん、へんてこりんな世界—』の概要

1865年に刊行された『不思議の国のアリス』は、現在まで150年以上も出版され続け、170以上の言語に翻訳されている世界的な名著です。

本展はその絵本が作られた背景を読み解き、「いかにして“アリス”は生まれたのか?」と探究しながら名作を解剖する展示。
芸術・デザイン・パフォーマンスの世界的コレクションを有する、イギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を皮切りに、2021年から世界各国で開催されている巡回展です。

会場は、作品や資料など「アリス」にまつわるさまざまなクリエイションに加えて、“へんてこりん”な世界を表現する装飾やインスタレーションも魅力。
アリスの世界観にめいっぱい浸れる、「体感型」の展覧会です。

天井にも巨大な装飾が!
こんな人におすすめ

・『不思議の国のアリス』が大好き!アリスの世界観に浸りたい!

・「アリス」の物語がどのようにしてできたのか、成り立ちや時代背景を知りたい!

・女子同士でインスタ映えする楽しいスポットに遊びに行きたい!

音声ガイドでは、展覧会サポーターの上戸彩さんと音声ガイド・ナビゲーターの細谷佳正さんが、魅力溢れるアリスの世界をたっぷりと紹介してくれます。

音声ガイドアプリ「聴く美術」なら手持ちのイヤホンで聴けて、2023年3月末まで何回でも再生可能。クイズも楽しめますよ。

『不思議の国のアリス』の作者、ルイス・キャロルってどんな人?

本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。大学の数学教師で、幾何学を専門にしていました。

キャロルは学問の傍ら、アートや演劇が大好きな一面も持っていたそうです。いわゆる「理系」でありながら言葉を操る才能に長けており、物語を作るのも元々上手だったのだとか。
また、当時まだ珍しかったカメラに夢中で、多くの写真を残しています。

科学・量子学にも関心があり、「アリス」世界の論理やパズルはこうした科学的知識もベースとなっています。

『不思議の国のアリス』は、そんな彼が学寮長の娘たちとテムズ川でボート遊びをしていたとき、彼女らにせがまれて即興で語ったお話です。

キャロルたちが“黄金の午後”を過ごしたテムズ川の風景

展覧会の見どころ

展示はルイス・キャロルの生い立ちや当時の時代背景の紹介から始まり、後半ではサルバドール・ダリや草間彌生が描いたアリス像も見られます

シュルレアリスムやサイケデリック文化、ロリータファッション、風刺画の題材や政治運動の象徴的アイコンなど、さまざまな分野の独創的な解釈を触発し続けてきた「アリス」の影響力を包括的に紹介。
充実度が高く、ボリューム満点の展示構成になっています。

また、『不思議の国のアリス』は道徳的な教訓を含めない最初の児童文学であり、「ナンセンス文学」「不条理なユーモア」と評価されてきた経緯があります。
さらに、当時はまだ珍しかった女性のヒロインが、自分の意志や勇気を持って奇妙な世界を進んでいくストーリーも大きな注目を集めました。

そのような時代ごとの受容について知ることができるのも非常におもしろい点です。

ダンス公演の衣裳はかなり独創的!!

いかにして“アリス”が生まれたかがわかる!

展示室の序盤には、関連資料がズラリ。ルイス・キャロルが「アリス」の物語を紡ぐにあたって、当時の社会や文学・芸術からも幅広く影響を受けていたことがわかります。

展示室に並ぶ数多くの資料

たとえば、ヴィクトリア女王統治下に桂冠詩人として活躍したアルフレッド・テニスンは、最も有名な叙事詩の一つ『モード』の作者です。
少女が主人公で、ユリとバラが咲き誇る庭園を舞台にした詩は、テニスンと交友関係があったキャロルに影響を与えたと言われています。

1859年に出版されたダーウィンの『種の起源』により、人びとの自然界への憧れが高まっていたことは、動物キャラクターの多さにも影響したと考えられています。

マッド・ハッターとのお茶会は、ヴィクトリア朝時代のアフタヌーンティー文化から。

産業革命やロンドン万博が話題になる社会で、ガラスと鉄を使ったクリスタルパレスを見たキャロルは 「一種のおとぎの国」と感じたのだとか。
インスピレーションの源がそこかしこにあったのですね。

書籍化・映画化の過程を知るのがおもしろい!

キャロルは即興で語った『不思議の国のアリス』の話を2年以上かけて手書きの絵本にし、主人公のモデルとなった少女・アリス・リドゥルにプレゼントしました。

その後、出版が決まったときに風刺画家として人気だったジョン・テニエルに挿絵を依頼し、二人で作品制作を進めました。
キャロルとテニエルは、二人とも完璧主義でこだわりが強い!双方とも譲れない点が多々あり、一度刷った本をすべてNGにしたこともあったようです。

やがて「アリス」は、日本も含め世界中で知られるようになります。

それからは後編の『鏡の国のアリス』が制作されたり、映画化されたりと「アリス」の物語はかなりの人気を博しました。
初めて作られた映画は10分ほどのサイレント。のちに大注目を浴びたのはディズニーのアニメーション映画で、近年ではティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』が、デジタル技術を駆使した実写版として上映されました。

会場ではティム自身が描いたデザイン画やスケッチがたくさん見られます。
写真撮影はNGのため、ぜひ現地でご覧ください!

“へんてこりん”な世界観の空間が楽しい!

『特別展アリス』では、“不思議の国”を彷彿とさせる装飾や映像にもご注目!

涙を流すアリスの映像
お茶会をイメージした大がかりなインスタレーション。
映像の色や模様が移り変わるのもおもしろい!
ニヤニヤ笑いを浮かべるチェシャー猫。
現れたかと思いきや、すぐに消えてしまいます。

“へんてこりん”な空間での鑑賞体験は、エキサイティングで非日常感がたっぷりです。

特設ショップには可愛い限定グッズが盛り沢山

展示室を出た後は、ぜひショップでお買い物を!

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のロゴ「V&A」が入ったトートバッグなどのグッズは、意外と貴重なお品物。
他にも、テニエルの挿絵を使ったポストカードやピンズ、Tシャツや缶バッジ、ティーブレイクにぴったりの英国産ジャムなど心ときめくアイテムが盛り沢山。

原作のイラストそのままの「チェシャ猫のぬいぐるみ」は、お一人1点限りの人気商品です。

ダリの絵がポストカードになっているのは嬉しい!
サイケデリックなチェシャ猫や白ウサギのイラストもオシャレ。
四角いキューブに紅茶のティーバッグ(イングリッシュブレックファースト)1袋と、
ショートブレッドが1つ入ったセット。箱の絵柄は複数あり、お土産にもぴったり。

展覧会の公式グッズ以外にも、アリスをモチーフにしたアクセサリーや小物がたくさんあります。

ぜひお気に入りを見つけてみてください。

『特別展アリス』で、へんてこりんな世界を楽しもう!

へんてこりんでワクワクするアリスの世界は、10月10日(月・祝)までお楽しみいただけます。

なお、本展は写真・動画の撮影にいくつかの規定があります
「作品を撮る際は3点以上を含める(1〜2点撮り、接写はNG)」「指定のエリア以外はムービーの撮影禁止」などのルールがあるので、会場で撮影をするときはよく確認しながら楽しみましょう。

撮影規定があるからこそ、展示の全貌は会場を訪れたときに初めてわかります
“へんてこりん”なアリスの世界を、ぜひ足を運んで体感してみてください。

『特別展アリス』は、2022年12月10日(土)〜2023年3月5日(日)に大阪府のあべのハルカス美術館にも巡回します。
関西にお住まいの方は、大阪開催に訪れてみるのもおすすめです。

アリスの世界を楽しもう!
展覧会情報
会期2022年7月16日(土)~10月10日(月・祝)※会期中無休
住所東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー52階
森アーツセンターギャラリー[六本木ヒルズ森タワー52F]
時間10:00~20:00(月・火・水曜は18:00まで)※9/19、10/10は20:00まで
※最終入館は閉館30分前まで ※事前予約制
休館日
観覧料会期中販売平日券(土日祝は+200円)
一般:¥2,100
大学生・専門学校生:¥1,500
高校生:¥1,300
小中生: ¥700
TEL050-5541-8600(9:00~20:00 / ハローダイヤル)
URL展覧会 公式サイト|https://alice.exhibit.jp
交通案内東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口 徒歩3分(コンコースにて直結)
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口 徒歩6分
都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」7出口 徒歩9分
東京メトロ南北線「麻布十番駅」4出口 徒歩12分
東京メトロ千代田線「乃木坂駅」5出口 徒歩10分
ご案内

※会期・開館情報は状況により変更になることがあります。

最新情報は、美術館・展覧会のホームページやSNSをご覧ください。