2023.2.1 開設1周年。何かが起こる…?

【美術ライターが振り返る】2022年これが良かった!展覧会5選【美術館巡り】

2022年がもうすぐ終わる今日この頃。皆さんはいかがお過ごしですか?

今年も魅力的な展覧会が沢山ありました。
年末を機に、1月〜12月までの展示を振り返ってみましょう。

この記事を書いた人

さつま瑠璃

美術ライター/編集者/エッセイスト。 “やさしい言葉でartをもっと楽しく身近に” をコンセプトに、WebやSNSでアート情報を発信しています。

絶賛!2022年の展覧会ランキング|ベスト5

『さつまがゆく』で掲載した展覧会レポートとともに、記者・さつまのおすすめを振り返ります。
※順位は個人のエモーションに基づくものであり、主観的です。

ご覧になった展覧会はありますか?

【第5位】『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』国立新美術館

【展覧会レポート】国立新美術館『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』

現代アートの巨匠であり「もの派」の旗手、李禹煥(リ・ウファン)の展覧会です。

この展示に関しては、“李禹煥”そのものが圧倒的に強かったなと感じます。
作品の素晴らしさ、思想・哲学のおもしろさが何よりも魅力的だった点で、題材が最高。

と言いつつ、パッと見では伝わりにくい彼の世界観を上手に見せ、鑑賞者を導いていた点で丁寧な企画だったと感じます。

もの派とは、芸術をイメージ・主題・意味の世界から解放し、「ものともの」「ものと人」との関係を問いかけることを指します。

……ただ聞いただけでは、何のことなのかわかりにくいかもしれません。
しかし、本展を見れば李の表現したかったことがきっとわかるはずです。

【展覧会レポート】国立新美術館『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』

また、“意味や意義から解き放たれて自由になれる” “物事の考え方はもっとシンプルでいい”という価値観に私自身が深く感動しました。
李禹煥をまだよく知らない人にも、ぜひ見てほしいと感じた展覧会です。

【第4位】『歌枕 あなたの知らない心の風景』サントリー美術館

【展覧会レポート】サントリー美術館『歌枕 あなたの知らない心の風景』

“歌枕”という、現代人にはあまり馴染みがないものを取り上げた展覧会。

サントリー美術館と言えば、2022年秋の「なにコレ展」に象徴されるようなユーモアのある企画が強み
運営元のサントリーが大阪の企業だからなのか、関西人を思わせる陽気な遊び心に満ちているような。
しかしながらこの「歌枕展」は珍しく、センチメンタルな方向性に振り切ったように感じます。

——どうしたらそこへ いけるのだろうか?

メインビジュアルに添えられたメッセージは、「歌枕」の意味を知れば深く頷けるはず。
切実さであり、詠嘆。憧憬。

【展覧会レポート】サントリー美術館『歌枕 あなたの知らない心の風景』

結論、歌枕とは「過去に忘れ去られてしまったもの」であり、現代人にとって「共感が難しいもの」
そこはかとない無常感を漂わせつつ、企画を通して「歌枕の再共有を試みる」姿勢に胸打たれました。

しっとりとした情緒が溢れる、見事な企画展だったと感じます。

【第3位】『鉄道と美術の150年』東京ステーションギャラリー

【展覧会レポート】東京ステーションギャラリー『鉄道と美術の150年』

鉄道開業から150周年。節目の年に開かれた「鉄道」が主役の展覧会は、「“美術”という言葉が生まれて150年」という意外な事実を絡めて構成されました。

会場を訪れて感じたのは、5年の歳月をかけて準備した圧倒的ボリュームと、「このミュージアムだからこそできた」という大正解感

「ステーション、と館名に入っているからには」と気合の入った、渾身の展覧会です。

【展覧会レポート】東京ステーションギャラリー『鉄道と美術の150年』

そもそもこの美術館自体、歴史ある東京駅の駅舎にできた空間。
鉄道にゆかりのある場所で開催することの強い意味を感じました。

やはり展覧会は、企画の内容だけではないと実感「この美術館だからできる」「この空間だからこそできる」といった要素が観賞体験を何倍もおもしろくする、まさに総合芸術なのだなと感じます。

フライヤーや会場バナー、図録に記されたセンセーショナルな文言も刺激的!
会場を一気に独自のカラーで包み込む、鋭利な言語感覚と表現力に脱帽です。

【第2位】『祈り・藤原新也』世田谷美術館

【展覧会レポート】世田谷美術館『祈り・藤原新也』

写真家・藤原新也さんの初となる大規模展。
「今までこんな写真展あった?」と思うような、巨大スケールの展示が圧巻です。

本当に素晴らしく、そして胸にズシリと重く、会場を1巡した後は暫く動けないくらいの衝撃がありました。
年配の方にファンが多いと聞きますが、彼が紡ぐ“メメント・モリ”はむしろ10代〜20代に特有の鋭敏な感性で受け取ってほしいと感じます。

数々の社会問題が噴出する世界で、否、そういう世界だからこそ彼は“祈り”をテーマとしました。
加速度的に疲弊して消えていく世界の中で、彼は「すべて奇跡だと思って撮る」と言います。

【展覧会レポート】世田谷美術館『祈り・藤原新也』

世界を旅するような感覚に浸りながら、奇跡のような写真と彼の鮮烈な言葉を食らってほしいです。

【第1位】『ミロ展 日本を夢みて』Bunkamuraザ・ミュージアム

【展覧会レポート】Bunkamuraザ・ミュージアム『ミロ展 日本を夢みて』

スペインの画家、ジュアン・ミロを取り上げた展覧会です。
ミロの色鮮やかな大画面の絵画は見ごたえ抜群!会場にいるだけでとても楽しかったです。

「長い間、日本を夢みていた」と語るミロは若い頃から日本に関心があり、日本美術に影響を受けながら創作活動をした人物。
念願叶って73歳でやっと初来日を果たし、各地を巡りながらさまざまな日本文化を楽しんだそうです。

長年の夢を叶えたミロの、いきいきとした表情を捉えた写真が印象的でした。

嬉しそうに微笑むミロの表情に、思わず「良かったね、ミロ!」と声をかけたくなるほど。

【展覧会レポート】Bunkamuraザ・ミュージアム『ミロ展 日本を夢みて』

海外の人がこんなにも日本を愛してくれたことが嬉しく、その点でも感慨深い。
日本の美しい芸術や文化、日本人の感性を誇りに思っていいのだと感じさせてくれました。

また、美術学校時代の仲間・アルティガスや、書籍をきっかけに深い親交が生まれた瀧口修造との友情エピソードにも、心動かされました。

2010年ぶりの大規模回顧展ということで、近年の研究成果が反映された展示内容。
学術的にも意義深い展覧会であると同時に、エモーショナルな余韻の残る素晴らしい企画でした。

2022年の素晴らしい展覧会に感謝を!

美術ライター/エッセイストとして、2022年は数多くの展覧会に足を運ばせていただきました。
内覧会取材では、企画を担当された学芸員の方やアーティストさんのお話を伺うこともあり、懸命に制作されてきたことを実感していたものです。

企画立ち上げから作品の貸し借り、広報や宣伝、教育普及やイベントプログラムの立案、他にもいろいろ——
展覧会には沢山の人が携わり、思いを込めて作られていることを改めて認識しました。

私自身の話で言えば、展覧会を見るときは作品そのものの価値や学問的な事実を知ることよりも、見せ方やキュレーションのおもしろさを体感することに心惹かれます
まるで映画や演劇を見るように、小説や漫画を読むように展覧会を楽しむのが私のスタイル。

その中で美しさやメッセージに心動く瞬間、感傷的になる瞬間を拾い上げ、言葉で著すことで多くの人びとに“心の豊かさ”を伝えることが私のミッションです。

2023年の企画展も、続々と新情報が出てきています。楽しみですね。

来年も、心ときめく素晴らしい展覧会に出会えることを期待しています。

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