【書評】『ロートレックの食卓』(2009年)のブックレビュー

アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック——19世紀末のフランスで活躍した画家の一人です。

パリのモンマルトルにあるナイトクラブに通い詰め、ポスターという大衆芸術で脚光を浴びた彼の一面。それは類まれなる美食家だったこと。自ら料理をすることも珍しくなく、そのレシピやメモは彼が36歳の若さで亡くなった後も人びとの関心を集めました。

そんな彼の好んだ味を現代風に再現し、エピソードとともに紹介した『ロートレックの食卓』について、あらすじと見どころを解説します。

『ロートレックの食卓』表紙
ご案内

※この記事では書籍の詳しい内容に触れています。

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『ロートレックの食卓』の基本情報とあらすじ

ロートレックと親友の画商、モーリス・ジョワイヤンが残した料理のメモやレシピは、「独身モモ氏の料理法」としてまとめられました。“モモ”はロートレックのペンネームであり、ジョワイヤンと結成した美食家グループの名前でもあったそうです。

「独身モモ氏の料理法」は各国語に翻訳されて世界中に広まり、日本でも出版されましたが今では絶版になっているとのこと。『ロートレックの食卓』では、この料理メモを元にしたレシピをいくつか掲載しています。

発行2009年12月
編著者林綾野、千足伸行
発行所株式会社講談社

表紙にもなっている《快楽の女王》(1892年)をはじめ、ロートレックの作品は東京都・丸の内三菱一号館美術館に多く所蔵されています。ロートレックが生まれたアルビの町にあるロートレック美術館とは、姉妹館提携を結んでいる美術館でもあります。

『ロートレックの食卓』の書評

パリの夜を彩ったポスター画家の生き様になぞらえて、本書では彼の人生を“酒とバラの日々”、彼の愛した食を“快楽の食卓”と表現しています。右開きで読み始めるとロートレックにまつわる読み物を楽しむことができ、左開きで見ると華やかなレシピブックになっているのもこだわりを感じられる点です。

料理のレシピはどれも美味しそう。

掲載されている20種類以上のレシピは、どれも美味しそうで目移りしてしまうほど!

極上のボルドーワインを使った「牛肉のマルロメ酒煮」や、じゃがいもを使うシンプルな家庭料理「ドフィネ風グラタン」など、本格的かつ誰でも作りやすいレシピなのが嬉しいところ。お酒好きだったロートレックらしい「酒の肴のチーズトースト」や、幼いことから狩猟が身近だったからか「マルモット(リス)の煮込み」に「雛山鳩 オリーブ添え」といったワイルドなメニューまで多種多様です。

ロートレックは南フランスの貴族の家生まれ。伝統を大切にする家庭で育ちながらも、ポスターという前衛・大衆芸術に傾倒していった二面性を持っています。彼の料理にもそんなバックグラウンドが表れているように感じるものです。

本の中では、ロートレックが好きなスパイスも5つ紹介。ブイヨンやコニャック、エシャロットなどフランスらしい食材も出てきますので、フランス料理が好きな人もお楽しみいただける内容です

ロートレックについての理解が深まる

本書では、林氏がロートレックの生い立ちについて紹介し、千足氏がロートレックの生きた時代や当時の社会について解説しています。

ただレシピ本を楽しむだけではなく、ロートレックそのものへの理解が深まるフィンセント・ファン・ゴッホと仲良しだったというエピソードも載っています。

足が不自由ながらも生涯絵を愛して名声を手に入れ、ともに食卓を囲む友人たちに恵まれた人生。

しかしながら放蕩の晩年を過ごし、病に倒れたロートレック。

彼の絵画や略年譜、ゆかりの地がわかるパリの地図も見ながら、ロートレックのさまざまな面を学べます。

『ロートレックの食卓』レビュー総評

総評
作品のおもしろさ
——率直な印象・感想
 (5)
知識が身につくか
——学問・知識に興味のある人が楽しめそうか
 (5)
読みやすさ
——内容の難易度やとっつきやすさ
 (4)

美味しそうなレシピがいっぱいの、見ているだけで楽しい料理本。それでいて19世紀末フランスの歴史や社会、美術史について学べる書籍でもあります。

シリーズものとしてクレー、フェルメール、ゴッホ、モネのレシピ本もあるので、本書と一緒にお手に取ってみてはいかがでしょうか

今回ご紹介した書籍は三菱一号館美術館で購入しましたが、遠方の人や今すぐほしい人はAmazonでも可能です。
アートなフランス料理を覚えて、食卓をバラ色に彩ってみましょう!

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