木村佳代子氏(「VIS VIVA FLORA」会場にて撮影)
東京都・銀座のギャルリーためながでは、木村佳代子の個展「VIS VIVA FLORA(ヴィス・ヴィヴァ・フローラ)」展を、2024年11月9日(土)から2024年12月8日(日)まで開催します。
アートフェアやグループ展では完売が続き、活躍が目覚ましい木村氏の新作約40点が一堂に。そして、イタリアの老舗フレグランスブランド「サンタ・マリア・ノヴェッラ」との特別なコラボレーションで、絵画とともに花の香りも楽しめます。本記事では開幕初日に行われた内覧会の様子を、作家インタビューを交えながらリポートします。
※主催者の許可を得て撮影をしています。
花の美しさに圧倒され、宇宙に思い馳せる。
会場を華やかに彩るのは、木村氏が描いた数々の花たち。実際に対峙してみると、まずはその大画面に圧倒されます。そこに描かれた花の印象はどこか幽玄で独特です。
一般的に花の絵と聞いて、多くの人が想像するような力強さや迫力、生命力のイメージとは少し趣を異にする花たち。死生観や宇宙を感じさせるそれは、道端の花やフラワーショップの花のように身近で日常的なものよりも、もっと大きなものを思わせる存在。花のようでいて、これは花じゃないのかもしれない、そんな不思議な感覚におそわれます。
「花を通じて、世界の成り立ちや宇宙や命みたいなものを描いている」と木村氏は語ります。
——もともとお花が好きでその感性ありきというよりは、「描きたいものが先にあって、それを表現できるのが花だった」ような感覚が近いのでしょうか。
そうですね。本展で販売している「FLORAISON フロレゾン 木村佳代子作品集」の序文にも書いたのですが、実は最初から花を描いてはいなかったんです。けれども3.11の震災を経て、「命って何だろう」と考えるようになりました。それまでの作品は抽象的な絵画が多かったのですが、やっぱりもう少し実体のあるものをきちんと描こうと思い、生と死を象徴するような切花を描くところから始めたのが最初ですね。
——花の茎が途中で切られているのは、切花のイメージからだったんですね。その茎、あるいは花弁が下に長く垂れている描写が特徴的だなと思いました。また、暗い背景の中に花だけが浮かんでいるような、浮遊感のある描き方も独特だなと感じます。
垂れている、落ちている姿にはいろいろな意味合いがありますが、その一つとして執着からの解放を表しています。重力や実体の重さから解放されたい欲求と、一方でそれらに執着している様を表現しています。浮かんでいる花はまさに解放や忘却を表したものです。
サンタ・マリア・ノヴェッラの香水とコラボレーション
会場内では、まるで香水売り場のような美しいディスプレイも目を惹きます。本展ではサンタ・マリア・ノヴェッラ・ジャパンの協力で、木村氏の作品とフレグランスのコラボレーションが実現しました。花の名を冠した香水からイメージを膨らませて描いた、3点の絵画を実際の香りとともに堪能できます。
——今回のような、香りとコラボレーションした絵画やこのような形での展示は初めてですか。
はい。サンタ・マリア・ノヴェッラさんが販売しているお花の香水の中から、3つ選んで新作を描きました。私の作品は背景が暗めで強い印象の絵が多いのですが、いただいたサンプルが優しいフレグランスだったので、絵も優しい雰囲気にしようと思い、香りからイメージした色づかいやタッチで描こうと意識してみました。お題があると何か新しく自分の中で表現してみようと思うので、ありがたいですね。
“世界最古の薬局”として知られるサンタ・マリア・ノヴェッラの歴史は、1221年にイタリアのフィレンツェで始まりました。現在でも伝統を守りながら、上品な香りの数々を展開しています。会場で気に入った香りがあれば、ギャラリーでそのまま購入できるのも楽しさの一つ。あるいは、近隣にある銀座店でもお買い物ができます。
力強よく生きる命だからこそ、同時にその終わりが色濃く浮かび上がるように、ふとした瞬間に誰しもが感じることのあるこの世界の「時間」「命」「死」。そして、それらを包括する「宇宙」。
見つめるほどに心に響くような深い魅力に満ちた作品を、この機会にぜひお楽しみください。
会期 | 2024年11月9日(土)〜2024年12月8日(日) |
住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座7-5-4 毛利ビル 1F |
時間 | 月〜土 11:00 – 19:00 日・祝 11:00 – 17:00 |
休廊日 | 会期中無休 |
観覧料 | 無料 |
TEL | 03-3573-5368 |
URL | ギャルリーためなが|https://www.tamenaga.com/ja/ |