「さつまがゆく」をお読みの皆さま、はじめまして。
アート・カルチャーにまつわる書き手やインタビュアーとして活動している、Naomiと申します。
ブログ「さつまがゆく」がスタートして1年。さつまさんならではの視点で書かれる、展覧会やアートにまつわる記事を、きっと多くの読者さんが日々楽しみにされていらっしゃることと思います。かく言うわたしも、その一人として拝読しておりました。
今回、読者の代表として、そしてアートをこよなく愛する書き手の同志として、
ご活動のこれまで・これからのお話を伺いました。
読んでいてワクワクするような、とっても魅力的な文章を書くさつまさんの"素顔"を、ぎゅぎゅっとお届けします。
——ブログ「さつまがゆく」が1周年を迎え、美術ライターとしてのご活動も今年で3年目ですね。
はい、皆さまのおかげです!私が活動を続けてきたこの数年では、美術館や展覧会へ足を運び、感想をSNSで発信する10代や20代の若い世代は本当に増えたなぁと実感しています。
「さつまがゆく」は2022年2月に立ち上げましたが、それまでの「アートは専門家やマニアだけが難しい言葉で語り合っている」というイメージを少しでも変えられたらと、“やさしい言葉でartをもっと楽しく身近に”をコンセプトに掲げて更新を続けてきました。
実は……少し前まではブログだと絶対に言いたくなくて、Webマガジンと言っていたんですよ(笑)。ブログと言うと素人の書き散らし的なイメージが強く、Webマガジンですと宣言したほうが公的できちんとしている印象があるような気がして。でも今は堂々と「ブログ」と名乗っています。
——それは大きな心境の変化ですね!理由を教えてください。
私が美術館や展覧会を見て、「さつまがゆく」で書きたい!と思うことって、作家の情報や作品の来歴、美術的な価値についての解説や紹介ではないんです。それを作った作家がどんな人物だったのか、どんな時代や状況があったのか、といった“物語”をストーリーテラーのように伝えたいんですよね。
そして、展覧会を観た自分自身が何に感動して心を動かされたのか、とっても個人的なエピソードをエッセイとして綴りたいんです。
それを読んでくださった人が、「自分もそう思った!これだこれだ!」って、まるで自分の気持ちを代弁してくれたかのように喜んでくれるのが嬉しくて。
自分の感情を自分の言葉で伝えていきたい、私が良いと思ったから「さつまがゆく」で書きたい。そう思って臨むなら、むしろ「ブログ」と堂々と名乗るべきなんでは?と気付いたんです。
——なるほど!そもそも、さつまさんが美術にまつわるライターを始めたきっかけって何だったのでしょうか。
きっかけは、会社員をしていた頃にnoteというブログのようなサービスがあると知って、気軽な気持ちで書き始めたことでした。大学では文学部で日本近代文学を専攻していましたし、文章を書くことも好きでしたが、まさかお仕事にできるとは思ってもみなかったですね。
好きなものにまつわるエッセイを日記を書くような感覚で更新していたら、ある日突然、全く知らない人から、「あなたのエッセイを有償で掲載させてほしい」とご連絡をいただいたんです。
ちょうど「としまえん」の閉園が迫っていた頃で、同園をテーマにした同人誌を準備されていた人からのご相談でした。Web上で発信していると、こういうことがあるんだ!と非常に驚きましたね。
【告知】『としまえん追想同人誌 しゅうまつモノローグ』に寄稿しました——素敵なきっかけですね。いろいろなテーマの中から、美術に絞ってみようかなと思ったのはなぜ?
アーティゾン美術館に行った話を書いた記事が、これまでよりもずっと多くの人に読んでもらえたんです。当時の投稿にしては「いいね」がたくさんついたので、意外と需要があるのかな?と。
もともと美術鑑賞は趣味の一つで、専門的に学んだ経験もないのですが……自分自身、書いていて楽しかったので、美術系のトピックで書き続けることにしました。その矢先、とあるオウンドメディアの編集部からアート系の記事執筆のお話をいただいて、本当に本当にびっくりしました。
ちょうどその時期、フリーランスになろうかすごく迷っていたんです。迷いすぎて占い師さんに相談しに行ったくらい(笑)。そこで、「クリエイティブな仕事をした方がいい」「堅実な道を進もうとしがちだけど、それがあなたのクリエイティビティを邪魔している」とかなり心に刺さる言葉をかけられたタイミングと、書いた文章に注目してもらうことが重なって、背中を押されました(笑)。でも不思議と不安はなかったです。
——占い、当たりましたね(笑)
ほんとですね(笑)。
最近ふと気づいたのですが、私が展覧会を観る感覚って、どちらかというと映画や演劇を観に行く感覚に近いのかもしれません。
——それってもしかして、学生時代のさつまさんが、ミュージカルや演劇に取り組まれていたことと関係していますか?
あまり意識したことがなかったのですが……そうかもしれませんね。
実際、好きなアーティストのライブや、劇団四季の公演を観に行った感想を書いたnoteには、「あの時の感動がよみがってくるようだ」「観に行けなかったけれど、現場の様子が手に取るように分かって良かった」と感想をいただきました。ファンの一人として、同じ目線のファンに喜んでもらえるのはとても嬉しいことです。
展覧会をご紹介するときも、展示の構成や、最初や最後にどんな作品が登場するのか、など細かなところまで注目しています。企画された方々の気持ちに寄り添って、意図や全体のストーリーを読み解いてお伝えできたら、と考えています。
——舞台芸術、しかもご自身が役者をしていたからこそ分かる、見えるものや伝えられる視点がありますよね。そのバックグラウンドの切り口は、美術の書き手としてもとても強みになると思います。ちなみに、演劇をやっていて良かった、と思うことはありますか。
まずは度胸がつきました。演出家の指示で幾度となく即興劇をやっていたからかな。本当は小心者で内向的なんですが、今は初対面の人とも物怖じせずにお話しできます。あと、ミュージカルと演劇の稽古で発声練習を10年近くやってきたので、滑舌が良くて喋りが聴きやすいと褒めていただけることは多いですね。
ただ、嘘みたいな話ですが、私、全く嘘がつけなくて。普段の生活の中では演じることができないんです(笑)。馬鹿正直に生きていますね。
——それは意外ですね(笑)。では最後に、このブログ「さつまがゆく」や、さつまさんご自身がこれからチャレンジしたいことをお聞かせください。
まずこのブログは、私だけの場所ではなく、もっと開かれた場に変えながら続けていきたいです。すでにいくつかの企画を進めていますが、いろいろな人が集い、楽しんで参加してもらえるような媒体にしたいですね。このインタビュー企画もその一環だと言えます。
——そうでしたか。参加でき、とても光栄です。
こちらこそです!
また、美術の中でも現代アートは社会的な課題を鑑賞者に提起し、共に考える役割を担っていますよね。自分もできる範囲で、特にジェンダーや環境保護などの問題において、社会をより良くする取り組みや活動に何かしら貢献したいです。例えば、それらをテーマとする地域の芸術祭で一端を担えたら嬉しいですね。
そして、そもそも私が書いたエッセイや文章をより多くの人に読んでいただくためには、もっと有名にならないといけない、とも思っています。
まず、これまではWebの活動が中心でしたが、それらを続けつつ紙媒体のお仕事を増やしたいです。例えば、年間の美術展を特集するムックで共同編集をする、出版社から書籍を出すとか。また、テレビやラジオへの出演、ニコニコ美術館のような解説のお仕事など、文章以外の方法で伝えることにもチャレンジしたいです。
——これからのご活躍をとても楽しみにしています。ありがとうございました。
\インタビュー記事を書いてくださった方/
Naomiさん
聞き手・文筆家(インタビュー・取材・企画編集・広報・コラムニスト)
静岡県生まれ、東京都在住。
スターバックス、採用PR、広告、Webディレクターなどを経て、2020年より現職。
「アート・デザイン」「ミュージアム・ギャラリー」「本」「職業」「大人の学び」を主なテーマに、企画・取材・インタビュー・編集・執筆し、音声でも発信するほか、企業のオウンドメディアや、オンラインコミュニティのコミュニティマネージャー、個人/法人向けの文章講座やアート講座の講師・ファシリテーターとしても活動。
好きなものや興味関心の守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダレス。もの・こと・場所以上に、その人の生き方やルーツ・ターニングポイント・人生哲学・小さなこだわり・偏愛について雑談するのが好き。