ゲームや特撮、玩具やカートゥーンアニメの身近なキャラクターの数々。そのようなキャラクターをテーマにしたグループ展「キャラクター・マトリクス」が、株式会社リクルートホールディングスが運営するBUGにて、アーティストのたかくらかずき氏と共同で開催中です。
参加する青山夢、影山紗和子、九鬼知也、たかくらかずき、谷村メイチンロマーナ、平山匠の6名のアーティストは、主に平成以降のキャラクターに影響を受けて各々のオリジナル作品を制作しています。本記事ではたかくら氏のコメントを交えつつ、会場のルポをお届けします。
※会場内は写真・映像が撮影可能です。
キャラクターバリエーションの世界にフォーカスしたい
たかくらかずき氏 プロフィール
1987年、山梨県出身。東京造形大学大学院修士課程修了。ビデオゲームやピクセルアート、VR、NFT、AIなどのデジタル表現を使用し、仏教などの東洋思想による現代美術のルール書き換えとデジタルデータの新たな価値追求、キャラクターバリエーションの美学をテーマに作品を制作している。
たかくらかずき氏は、BUGが主催する「BUG Art Award」の前進であるコンペティション「1_WALL」にて、2012年にファイナリストへ選出されました。また2023年から始まったBUG Art Awardでは審査員を務めるなど、かねてよりBUGとの関係が深いアーティストです。今回は展覧会を通じて、BUGが謳う「この世界に必要な違和感」や「無数のハプニング」と出会える場をつくりあげようと試みました。
「アートの中でキャラクター絵画というと、美少女アニメや人間がモチーフのものはよく見ますが、そうではなくモンスターを描いてみたい若手アーティストが実は結構います。そのお話を聞いて、それらにフォーカスする展示をしたいと思い、この企画に至りました」と話します。
曼荼羅を根底にしたキャラクター・マトリクスの世界
BUG入り口からもガラス越しに見える巨大な構造物は、まるで演劇の舞台セットそのもの。会場の奥が高台のようになり、そこをのぼるまでの道程(スロープや階段)や、その下にも作品が展示されています。二つの螺旋が絡み合うような空間構成は、たかくら氏の新作のテーマである曼荼羅に通じているといいます。
「キャラクターは今までストーリーとともに語られてきたことが多いと思いますが、ストーリーがなくてもキャラクターは成立します。そうした視点から、一つの時間軸で成り立っている歴史や物語に反して、もっと分散的なものが作れないかなと思いました。その発想が、まさに分散的な見せ方をしている曼荼羅につながっています」と解説します。
上の階は大きな作品が集まったエリアで迫力があり、下の階は人間の深層意識をイメージさせるような、内面的・精神的なものや神秘性を感じます。6人のグループ展でありながら、展示区画を明確に分けるのではなく、全員で一つの空間をつくりあげている点が見どころです。
妖怪や精霊信仰、多神教的世界観とも共通するキャラクターたち
自然光が入り込む上の階とは対照的に、下の階は地下室や舞台裏を想起させる薄暗い空間です。
通路を進んだ先に現れる《迦羅選曼荼羅》は、たかくら氏の作風を学習したAIが生成するイメージと、手描きのイメージを組み合わせた掛軸です。いわゆる仏教美術として目にする曼荼羅に現代的な要素が加わり、新鮮さを感じる作品。まるでゲーム開始時のキャラクター選択画面のように、デフォルメされて一体一体に名前が書かれた仏たちはどこか親しみやすく感じられます。
その隣では、キャラクターたちが儀式をする光景が広がります。壁面には会場設計に用いた舞台美術の図面が貼られ、BUGの空間自体が神秘的な立ち上がりの中にあるようなスケールが感じられる場所です。
一方で、周囲の木材や機材は立て込みに使ったものをそのまま置いています。現実を超えていくような想像力の高まりの中で、現実味のある物質が目の前にあるシチュエーションは、まさにフィクションを立ち上げるための舞台空間に通じる表現です。
初めて見るけれども、どこかで見たことがあるような懐かしさも覚える不思議なキャラクターたち。国内の現代美術シーンにおいて見落とされてきた「アニメ/オタクカルチャー以外のキャラクター表現」がそこにあり、その歴史が拾われ、紡がれて行きます。
妖怪や精霊信仰、多神教的世界観とも共通する「キャラクターバリエーション」の世界を、ぜひお楽しみください。
会期 | 2024年8月30日(金)〜2024年9月16日(月・祝) |
住所 | 〒100-6601 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1F Gran Tokyo SOUTH TOWER 1F, 1-9-2, Marunouchi, Chiyoda-ku, Tokyo |
時間 | 11:00 – 19:00 |
休館日 | 火曜休館 |
観覧料 | 入場無料 |
URL | BUG|https://bug.art/exhibition/charactermatrix-2024/ |
交通案内 | JR東京駅八重洲南口から徒歩3分 東京メトロ京橋駅8番出口から徒歩5分 東京メトロ銀座一丁目駅1番出口から徒歩7分 ※BUGには専用駐車場はありません。ご来館には公共交通機関をご利用ください。 |
主催 | BUG |
協力 | O株式会社 |