東京・虎ノ門から社会課題解決の兆しを発信するソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL(シグナル)」で、風景と食設計室 ホーの『帰り道、今夜の夕食について考えながら』展が10月4日(土)まで開催中です。
会場では、風景と食設計室ホーのインスタレーションによる新作を発表。作品鑑賞後は、ギャラリーと一体化しているカフェで物語冊子付きのスーププレートを食べられます。実際に訪れて作品を体験し、本展だけの特別な「食」を味わってきました。

ギャラリー周辺・虎ノ門のかつての風景と足元の世界に、想いを馳せる
到着したら、手前側の扉を開けて中へ。前面はカフェ・バースペース、奥に見える白壁の空間が展示会場です。




本展は、ひとつの『粒』を手に、『わたし』の生活と並行して巡る見えないものに焦点をあてたインスタレーション作品によるもの。体験型の展示として、案内に沿いながら物語を体験します。

白くてツルンとしたこの『粒』は、ギャラリー周辺・虎ノ門のかつての風景と足元の世界を中心にリサーチして紡いだ物語を共有するための重要なアイテム。まるで自分の分身のように、冊子に書かれた物語と今ここにいる自分を繋いでくれます。


冊子には、『粒』を都度どのようにしたら良いかが書かれています。穴の中に入れたり、山の上に置いてみたり。物語の場面を想像しながら自分自身を『粒』に重ね合わせて没入していくことで、今まで知らなかった世界が見えてきます。
例えば、今では整然としている虎ノ門の道路は、かつて土埃が舞っていたこと。いま自分が立っている地面のずっとずっと下には微生物たちの世界があって、途方もないような長い時間をかけて狭い空間で生命体として持続していること。ただ受け身でいるよりも、積極的に想像力を膨らませていくことで展示の本質や面白さが感じられるはずです。



その土地の風景や生活を通じて見えてきた問いを共有する「食」
作品の鑑賞後は、展示していたものと同じ物語冊子付のスーププレートを注文できます。この「食」は作品の解像度をさらに高め、豊かな余韻を残してくれるもの。
「遠くの風景と、ひとさじのスープ。世界とわたしの手のひらは繋がっている。」をコンセプトとする風景と食設計室 ホーは、その土地の風景や生活を通じて見えてきた問いを「物語」と「食」を通じて、鑑賞者に共有する作品を制作しており、この「食」の体験も作品の一部として重要な意味を持っているのです。


プレートに乗っているのは3品。まず「三層のスープ」は、足元の地底の世界から、かつて虎ノ門の地面と土埃までを表現しています。一番下は黒豆と塩麹のヴルテ、中間は牛蒡と土地のローズマリーのポタージュ、最上部は豆乳の泡と土のフレーク。食べるとほのかな塩気があり濃厚で、牛蒡の風味は土を思わせます。その上にふわりとトッピングされた豆乳の泡は軽やかで口当たりが良く、まるでレストランのコース料理に出てきそうな美味しさです。


銀杏葉のブックサブレはお茶のような香ばしさと甘みが印象的。ギャラリーの外に立ち並ぶ街路樹の銀杏並木から連想し、銀杏の葉のパウダーを練り込んでいるそうです。

パンは「土地のパン屋」こと、虎ノ門で営業するwith life bakeryのパンを取り寄せたものです。小麦の香り豊かなパンはスープとの相性も良く、バターを塗ればさらに味の変化を楽しめます。



いつもの景色は、過ぎ去った風景の先にある
本展のキュレーターを務め、過去にもSIGNALで多くのキュレーションを手掛けた田尾圭一郎さんは、「ギャラリーカフェのSIGNALで念願だった、食を通しての展示です。次々と開発が行われているホットな街・虎ノ門がどんな歴史を持つのかは、あまり知られていない。それを丁寧に観察し、ことばとスープに込めました。小さな日常に向き合ってもらえたら嬉しいです」と伝えました。
帰り道に今夜の夕食を考えるような、ささやかな日常が壮大な地底の上にあることの愛おしさ。銀杏並木が黄色く染まる頃にまたここに来れば、きっと自分なりに虎ノ門への思い入れが深まっていく。そんな気づきをくれる作品です。

会期 | 2025年9月9日(火)〜2025年10月4日(土) |
住所 | 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目2-11 The ParkRex TORANOMON 1F |
時間 | 11:00〜23:00(火:10:00〜20:00、土:11:00〜18:00) |
休廊日 | 月曜日 |
観覧料 | 入場無料 |
URL | SIGNAL|https://signing.co.jp/signal/ |
交通案内 | 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 A2出口から徒歩5分 東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 2a出口から徒歩3分 |
キュレーション | 田尾圭一郎(田尾企画編集室) |
監修 | 亀山淳史郎、菅井朋香(SIGNING) |
プロデュース | 幸田真里奈、小林穂乃香(SIGNING) |
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