【記者発表会レポート】大阪中之島美術館「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」

大阪中之島美術館は日本・スイス国交樹立160周年(2024年)を記念し、スイスを拠点に活躍した日本とスイスのアーティストの吉川静子と、スイスのグラフィックデザイナーのヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの初めての大規模回顧展「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」を、2024年12月21日(土)~2025年3月2日(日)の会期で開催することを発表しました。

本記事では、開幕に先立って在日スイス大使館で行われた記者発表会の様子をレポートします。

※主催者の許可を得て撮影をしています。

「私たちにとってのスイスのイメージを確定した2人の作家」

大阪中之島美術館は2022年にオープンして以来、20世紀から現在に至るまでのアートとデザインを収集し、コレクション周辺の展覧会活動をしています。

大阪中之島美術館・館長の菅谷富夫氏は「吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、まさに私たちにとってのスイスのイメージを確定した2人の作家をご紹介する良い機会にしたい」と話しました。

大阪中之島美術館・館長の菅谷富夫氏

後援の次期駐日スイス大使のロジェ・ドゥバッハ氏は「二人の作品は日本の感性とスイスの精密さが融合し、対比する中で異なる文化的な視点と芸術的な手法との交差性(Space In-Between)を体現しています」と紹介しました。

後援の次期駐日スイス大使のロジェ・ドゥバッハ氏

吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマンとは

チューリッヒにて 1965年頃、Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

吉川静子(1934-2019)とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(1914-1996)は、それぞれ進むべく道を開拓しながら、夫婦として創造的な生涯を共にした芸術家です。

吉川はデザイナーから芸術家へと転身し、人生の大半をスイスで過ごした教養ある芯の強い女性です。1960年代・70年代に、抽象絵画と彫刻により女性芸術家として注目されました。

ミューラー=ブロックマンは、1950年代以降スイスを代表するデザイナーとして国際的に知られる人物です。紙面における文字組みと構成の方法論についてまとめ命名した「グリッドシステム」は、デザイン史上の金字塔というべき理論として今日まで大きな影響を与え続けています。

展覧会の見どころ

スイスから約130点が来日し、日本初お披露目となる吉川の作品は色彩が魅力のひとつです。大阪中之島美術館・主任学芸員の平井直子氏は「デザイン教育を受けた素地を生かして、補色の関係にある色彩で構成している」と解説します。

吉川静子《m433 宇宙の織りもの―光輝ある 3》1991/1993年、吉川静子とヨゼフ・ミューラー・ブロックマン財団蔵、Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

一つの転換点といえるのは、初めて具象的なモチーフを使った太陽の作品群です。夫を亡くして精神的に大きな痛手を抱えていた中で、ローマの太陽の生命力に感銘を受けて制作しました。その後、シルクロードをテーマにしたシリーズに取り組んでいます。

吉川静子《z606 ローマ》1998年、吉川静子とヨゼフ・ミューラー・ブロックマン財団蔵、Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation
吉川静子《m780 lebensplus 16》2011/2012年、吉川静子とヨゼフ・ミューラー・ブロックマン財団蔵、Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

ミューラー=ブロックマンの約60点の作品は、洗練されたタイポグラフィーと「グリッドシステム」によるグラフィックデザインが見どころです。

ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン《ムジカ・ヴィヴァ 1972》1972年、大阪中之島美術館蔵、©Museum für Gestaltung Zurich, Switzerland

また、時代の先駆者となったヴィジュアル表現も必見です。平井氏は「まだポスターで写真を印刷することがほぼ行われていなかった時代に、フォトコラージュの技法で写真をポスターに合成した《作品名》は、非常に斬新で先進的なデザイン」と評価しています。

ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン《スイス自転車クラブ 子供を守れ!》1953年、サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託)、©Museum für Gestaltung Zurich, Switzerland

デザインとアートの豊かな融合を楽しめる本展。吉川とミューラー=ブロックマンの没後初、世界初の大規模な回顧展は、大阪中之島美術館のみの開催となります。

2024年11月22日(金)10:00からはお得な前売ペアチケット(一般2枚セット券)2,900円(税込)も発売されます。ぜひご注目ください。

開催概要
会期2024年12月21日(土)〜2025年3月2日(日)
住所〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1 大阪中之島美術館 5階展示室
時間10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日毎週月曜日、12月31日(火)、2025年1月1日(水・祝)、14日(火)、2月25日(火)
※2025年1月13日(月・祝)、2月24日(月・休)は開館
観覧料一般  1,700円(前売・団体 1,500円)
高大生  1,100円(前売・団体 900円)
※中学生以下無料
※税込価格。
※前売券販売期間:2024年11月22日(金)10:00〜12月20日(金)23:59まで
TEL06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)受付時間8:00〜21:00
URL大阪中之島美術館|https://nakka-art.jp/exhibition-post/sib-2024/
交通案内https://nakka-art.jp/visit/access/
主催大阪中之島美術館
特別協力Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation
後援在日スイス大使館 / Vitality.Swiss
助成一般財団法人 安藤忠雄文化財団

記事をもっと見る

詳しい内容はこちらの記事をチェック
友だち追加