19世紀フランスを代表する画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック。劇場のポスターをはじめ、彼が描いた作品は世紀末パリの喧騒や躍動感を想像させます。これらの紙作品の個人コレクションとして、世界最大級を誇るフィロス・コレクションから約240点を紹介する展覧会が、東京都・新宿のSOMPO美術館で開催中です。
本記事では、6月21日(金)に行われた内覧会の様子をレポートします。
※主催者の許可を得て撮影をしています。
フィロス・コレクションの核となる素描
第1章は赤を基調とした空間に、フィロス・コレクションの核となる素描作品が可能な限り展示されています。回る風車を思わせる配置は、19世紀末に誕生したフランスのパリ市内・モンマルトルのキャバレー「ムーラン・ルージュ」を想起させます。
素描というと一見地味に感じられますが、ロートレックの卓越した描写力こそ見どころ。そして版画とは異なり、すべてが一点ものであることも魅力です。ポスターの下絵のスケッチからは、作品の制作過程も垣間見えます。
20年以上にわたり収集する、ロートレックの紙作品
ギリシャ人コレクターのベリンダとポール・フィロス夫妻は、20年以上にわたりロートレック作品を個人コレクションとして収集しています。その総数は300点以上にのぼり、現在も増え続けています。すでにアメリカや中国ではコレクションを紹介する展覧会が開かれていますが、日本での開催は今回が初めてです。
開幕に先立ち、ポール・フィロス氏は「コレクターには、自分たちでアート作品を買って家に飾ることを幸せに感じる方もいらっしゃる。けれども妻と私は、自分たちが築き上げてきたコレクションを、皆さんと共有することを一番の喜びとしています」と伝えました。終始穏やかに微笑みを浮かべ、一つひとつ丁寧に言葉を紡ぐフィロス夫妻の姿に、会場は自然と温かな空気に。彼らがロートレックの作品を愛し、大切に集めて保管してきたもの。そこに込められた思いを感じながら改めて鑑賞してみると、より一層尊いものに感じられます。
ロートレックのオリジナルを楽しめる、文字入れ前のポスター
第4章はロートレックの代名詞である、ポスター画を中心とした空間です。大きく華やかな紙作品は、ロートレック・ファンの多くが期待するところ。
屋外に掲示されるポスターは、その多くが破損や変色などのためにオリジナルの状態をとどめていません。しかし、フィロス・コレクションのポスターは状態の良いものを厳選し、さらに第三者が文字入れをする前の刷りを収集しています。そのため、ロートレック自身のデザインを、オリジナルに近い形で鑑賞することが可能です。
終盤はロートレックが家族や知人に宛てた手紙などで、画家の私的生活と晩年を紹介しています。美食家だったという彼がプロデュースした食事会のメニューや、母との手紙のやり取りなどから、彼の人柄や周囲から愛されていたことが伝わります。
展示室の出口近くにある収蔵品コーナーでは、SOMPO美術館でいつでも見られるゴッホ《ひまわり》も展示中です。また、ミュージアムショップではロートレック作品をモチーフにしたオリジナルグッズを購入できます。
フィロス夫妻が大切に築き上げてきた、稀有な個人コレクション。本展を担当したSOMPO美術館 上席学芸員の小林晶子氏も「とても丁寧に厳選されていて、本当に質の高い作品。コンディションも優れている」と述べています。貴重なロートレック作品を見に、是非足を運んでみませんか。
会期 | 2024年6月22日(土)~2024年9月23日(月・祝) |
住所 | 〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1 SOMPO美術館 |
時間 | 10時~18時(金曜日は20:00まで)※最終入館は閉館30分前まで |
休館日 | 月曜日(ただし7/15、8/12、9/16、9/23は開館) |
観覧料 | 一般/事前購入券:1,600円、当日券1,800円 大学生/事前購入券:1,000円、当日券1,200円 高校生以下無料 (税込・日時指定予約推奨) |
TEL | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
URL | SOMPO美術館|https://www.sompo-museum.org |
交通案内 | JR新宿駅西口から徒歩5分 東京メトロ新宿駅から徒歩5分 東京メトロ西新宿駅C13出口から徒歩6分 西武新宿線西武新宿駅から徒歩7分 大江戸線都庁前駅A1出口から徒歩7分 |